第45話
「売れ残り股間砲!!!」
俺の放った技で前方の敵が吹き飛ぶ。
「タクヤ殿!www」
「ビッチはどこだ!?」
「ビッチ氏とメンヘラ氏は何とか逃がしたでござるwww 今頃は秋葉原の外にwww」
「そうか! だが、これはいったいどうなってやがんだ!?」
「俺達も分からない! ここでお前を待っていたら、突然奴らが現れて……!」
「あはぁ……俺の邪気眼でも黒歴史が見つからない……っ!」
「……う……う!」
それは圧倒的な軍勢、見渡す限りの人の群れ。敵方も本気のようだ、尋常じゃない数の敵が視界を埋め尽くしている。
「くそっ……」
俺は瞬時に状況を理解した。おそらくこれが作家の言っていた罠だろう。俺達を無人の秋葉原におびき寄せて、そこを叩く。非常にシンプルかつ強力無比。周囲を囲まれ退路を断たれ、俺達は敵の手の内で完全に孤立した。
「ぐわあっ!」
「くそおおお!」
「あああ!」
戦線で聞こえる仲間の悲鳴。しかし、そこで浮上する不可解な疑問。
「くそっ、どうなってやがる!?」
それは敵側の服装について。理由は分からないが奴らは、今までと違ってスーツを着ていない。いや、というよりもむしろ酷くラフな、街中で見かける若者のような外見。だが、どうしてそんな奴らに。
「何だ!? どうして味方がやられている!? Aラン大学卒業証書か!?」
「あはぁ、違う! 奴らは何も持っていない! 素手だ!」
「な、なら何故悲鳴が上がっているのでござるか……っ!?www」
混乱、迷走。追い詰められていることが恐怖感を煽り、仲間達の間でパニックが拡大していく。
「このままじゃ……があ!」
「ひっ、う……あぐっ」
「く、来るな! うあっ、うわあああ!」
阿鼻叫喚、絶望が首をもたげた。そんな中、邪気眼が叫ぶ。
「あはぁ……解析結果が出たぞ! あれは……あいつらは……っ!」
そして次に発せられた言葉で俺は思い知らされる。敵が、ルリが。本当にこの場で全てを終わらせようとしている事実に。
「あいつらはリア充だ!」
「……っ!」
そう、奴らはリア充。あのどこにでもいる普通の身なり。しかし、嫌われ者には決して届かぬ光。それがリア充。スーツの連中なんか可愛く見えて、Aラン大学卒業証書など比べるに値しない悪夢。
奴らは、互いに手を組んだり、笑い合ったりしながら。
「絶対大会優勝しようぜ!」
「おう! 俺達なら必ずできる!」
「ぶ、部活動での青春っ……ぐはぁ!」
それを見て数人が倒れる。
「なあ、海行こうぜ!」
「お、いいじゃん!」
「私も行きたーい」
「思い切って泊まりにしちゃうか?」
「僕、花火持ってきまーす!」
「な、夏の思い出……うぐっ」
そしてまた数人が胸を押さえて崩れ落ち。
「ねえ、私のこと好き?」
「……」
「ちょっと、黙ってないで答えて……むぐ」
「これでいいだろ?」
「いきなりききき、キスするなんて……もう、バカ! でも好き!」
「か、彼女とイチャイチャ……っ! うがああああああ!」
最後の攻撃にはほとんどの仲間が持って行かれた。かくいう俺達も、その例外に漏れず。
「ふ、ぐう……っ!」
「これを耐えるのは、もはや拙者達では……っwww」
「こ、このままでは……っ」
「じゃ、邪気眼が……壊れる……!」
「……あ……あっ!」
リア充の持つ陽のオーラ。それは嫌われ者にとって猛毒と同義。万が一、浴びれば心を、魂を侵食し、決して逃れられぬ苦痛となる。
「が……が……」
敵の攻撃は止まらない。手を変え、品を変え。次々と新たなシチュエーションが俺達を苦しめた。
「う……くそ……」
俺は周りを見回す。親父が以前言っていたことをすれば、あるいはこの状況を覆せるかもしれない。そう思って。
「……ぐ」
だが条件に合う相手は見つからず。
「……」
そうして俺達は負けた。結局この怒涛の攻めには成す術もなく、そのまま無念の内に崩れ落ちて行った。




