第41話
「本当に大丈夫なのか?」
「安心するでござるwww メンヘラ氏は一度血液を撒くと、数日はおとなしくなるwww おそらくその間に血を回復しているのでござろうwww」
「そうか」
俺がそちらに顔を向けると、メンヘラは相変わらず「キャハハ」と何もない場所を見て笑っていた。しかし、初めのような狂気的な雰囲気は薄れていて。たぶん、キモオタの見解は当たっているのだろう。
「それでタクヤ殿www これから拙者達はどうするでござるか?www」
「それは……」
これから、か。俺は遠く離れた地平線を見つめて。
「……」
当てはない、それが本心だった。一応、ハローワークに捕らえられていた仲間は全員救出して、今この場にはかなりの数の主力メンバーが集結している。さて。
「どうし――」
どうしようか。俺がそう呟こうとしたそのとき。
「……ん?」
ポシェットの中で、ぴろりろっと妙な電子音のようなものが聞こえた。
「あれ、作家か?」
音源は俺の携帯電話、メールが来たときの着信音。また、その送信者欄には「エロ同人作家」の文字が。
「……なるほどな」
「どうかしたでござるか、タクヤ殿?www」
「ん、ああ。これからの予定が決まったんだよ」
「ほうwww して、それはどういう?www」
「秋葉原だ」
「え?www」
「ハローワークから解放したここの連中を率いて、秋葉原に向かう」
「な……っwww しかし、それは……www」
「ああ。秋葉原は俺達にとって本拠地であり、聖地だ。あそこを取り戻せば、このめちゃくちゃな世界の全てが覆る。つまりこれは――」
俺は息を吸い、覚悟を決めるよう言う。
「最終決戦だ」
「だが……www」
そんな俺にキモオタは諭すように告げて。
「だが、敵もそのことは承知の上www 無論、そこに配備された軍勢はこのハローワークの比ではないだろう?www ならば、いかに今回多くのメンバーを救出できたとはいえ、それをするには時期尚早のようなwww」
「大丈夫だ」
しかし俺の決意は変わらない。何故なら。
「これを見てくれ」
「む?www 何だ、携帯電話か?www お、これはエロ同人作家殿からのメールwww 何々……この度は……って、これは!www」
「ああ、今がチャンスだ。いや、むしろこれを逃したら次はねえかもしれねえ」
「そうでござるな!www あちらに拙者達が加われば勝てると、あの聡明な作家殿がそう勝機を見出しているのならwww おそらくそこに間違いはないwww その話には、もはや乗らぬ術はないでござるwww」
キモオタは興奮気味にまくし立てると、さっそく他のメンバーにも事情を説明しに行った。秋葉原を取り戻せるということが本気で嬉しいのだろう。奴は楽しげに体を弾ませている。だから。
「……これで、もう引き返すことはできねえな」
だから、俺はその背を。そしてここにいる皆を静かに見つめながら。
「わりい」
そう誰にも聞こえないように囁いた。
>この度は、打倒ハローワークおめでとう。情報はこちらにもと届いている。これは極めて
>レアなケースだが、今回の件は我々にとって非常に都合がいい。何故なら、この秋葉原に
>は、急速に仲間達が集まっているからだ。タクヤのハローワーク解放の一報が各地にいき
>わたったためだろう。既にこちらでは敵と戦うための部隊も組織してある。奇妙なものだ
>な。初めは、「革命」などとお前に嘯いたが、今はそれが現実のものになろうとしている。
>だから、タクヤ達もこちらに合流してくれないだろうか。私達の秋葉原を取り戻そう。
タクヤはどうして仲間に謝ったのか。気付いた方は、にやにやしていてください(笑)




