第35話
前回のしめ方、分からない方は「ひぐらしの鳴く頃に」をチェックしてくださいw
「ここが……」
「魔物のいる場所でござるなwww」
目の前には金庫の門のような頑強な扉。ついに俺達はやってきたのだ、この地下の最深部へと。
「……」
右手に握られたバットを見つめる。そこには、この扉を開けるためのシリアルナンバーが記載されていた。
「……開けるぞ」
ごくり。誰の喉が鳴ったか分からない。しかし急激に膨らむ痛いほどの緊張感は、きっとここにいる誰もが感じていたことだろう
「……」
ぴ、ぴ、ぴ。響く無機質な電子音。最後にエンターキーを叩けば、この扉は開く。
だがそのとき。
「……ちょっと待てよ」
俺は肝心なことを聞きそびれていたことに気付いて。
「おい、キモオタ」
「ん、何でござるか?www タクヤ殿www」
「そういえばここに封印されている魔物って何だ?」
「……www」
キモオタの反応が鈍い。思えばこいつは最初からハローワークを壊滅状態に陥れただの、そういう存在だのとぼやけた表現しかしていなくて。
だから。
「おい、ここまで来たんだから、だんまりはなしだぜ。魔物っていっても、本当にここにお伽話の怪物が眠っているって訳じゃねえんだろ? なら、あるのは奴らを倒せる武器か? それとも別のものか?」
「隠すのはもう、無理そうでござるな……www」
「おう」
「だが、タクヤ殿よwww おそらくこの話を聞けば、いかにタクヤ殿でも開けるのを迷う可能性が……www それでも――」
「くどいぞ」
回りくどいキモオタを俺は一喝する。
「俺は最初に言ったぞ、後悔はしねえとな。それよりもさっさとしようぜ? 上で、ビッチが待ちくたびれているはずだからな」
「……そうかwww ならばwww」
そうしてキモオタは俺に顔を近付け、ぼそぼそと耳打ちする。最初は何を言っているのか聞き取れなかった。いや、聞き取りたくなくて、脳が勝手に聴覚を停止したのかもしれない。
「……」
けれどその靄のような言葉は頭の中で次第に形を成していく。また、それが理解に繋がったとき俺の奥歯はかちかちと音を立て始めていて。
「……う、そ」
「現実……でござるwww」
俺はキモオタを見た。語調は明るくとも、奴の表情も俺と同じく恐怖に引きつっている。
「……まさ、か」
キモオタの言葉が真実ならば。ハローワークの壊滅、地下深くに封じられた理由、それら全てに納得ができた。確かに、あれならば。あいつならば付近一帯を巻き込んで、この場所に地獄を出現させることが可能だ。
「……」
改めて、そこを見つめる。この扉一枚先に奴がいるのだ。そのことを考えただけでも、体は震えを止め切れず。
しかし。
「……けど」
俺はゆっくと自身の人差し指をエンターキーへと伸ばした。
「やるしかねえよな」
ぶれる指先。固めた意志に反して、恐怖が手を。
そのとき。
「……お前ら」
「そうでござるwww」
「ああ」
「あはぁ……」
「……う……え」
いつの間にかこいつらが俺の手を震えないようしっかりと掴んでいる。
ならば。
「……」
心にもはや恐怖はなかった。いや、怖くともそれを成せる勇気があった。何故なら、俺は一人じゃない。俺には大切な仲間がいるから。
「……行くぞ!」
そして力強く、押さえつけるようにエンターキー叩かれる。次いで、ぷしゅーと音が鳴り、扉が左右に開き始めて。
「……っ」
強烈な光がその場に満ちる。そんな中、一人の影。これだけ明るい光景で、独立しているかのように沈み込む負のオーラ。
それは。
さあ、鬼が出るか蛇が出るか。




