第27話
次の部屋。
「え? おい、一発で終わりかよ?」
動かなくなったコミュ障を柔道着のエイリは見下ろす。
「おーい、もしもーし」
「……」
何度かわき腹辺りを蹴る、それでもコミュ症はまるで死体のように倒れたままで。
「マジかよ。つまんねえな」
エイリは大きなため息をつく。次いで彼は懐から無線機を取り出した。
「あ、オリトさん」
『エイリか?』
「そうそう。俺ん所は終わった」
『随分早いな?』
「雑魚だった。一発で終わった。つまんねえよ」
『そうか。こちらにも敵が来た、一度切るぞ』
「ああ」
ぶつり。彼は無線機を切った。
そして。
「……っが!」
そんな濁音が口から漏れたかと思うと。
「ぐふ……」
眼球が裏返り、エイリはそのまま倒れ伏す。また、そこにはそれを見下ろす人影が。
「……」
コミュ障だった。
「……」
彼は床に転がるエイリを、あたかも無価値な虫けらの死体でも見るかのように見つめる。
「一発で終わりかよ」
次いで。
「あのさあ、お前調子に乗ってなかった? 僕がコミュ障だからって。でもさ、僕って別に言葉が喋れない訳じゃないんだよ? ただ、人の前だと上手く声が出ないだけ。今は普通に話せているでしょ? だらか、本当にただそれだけのことでさ。それなのにお前は全然僕に気を遣わずに、色々話しかけてきやがって。マジで最悪。すげー不快。ほんと、死ねばいいよ」
コミュ障の言葉は止まらない。
「というか僕のこと弱いって思っていたでしょ? 僕がコミュ障だからって。そこが馬鹿。お前、ほんと頭悪いよ。コミュ障って、コミュニケーションが苦手ってなんだよ? てことはさ、つまり相手と意思の疎通を取るのが苦手ってだけ。だからさ」
それに彼は先ほどからエイリの横腹をがすがすと蹴り続けていて。
「自分の意志を一方的に押しつけるのは得意なんだよ? 例えば相手を傷つけたい、とかね」
ぶらぶらと手首を振る動作。どうやらその手でエイリを殴りつけて、意識を失わせたらしい。また、彼は最後に。
「今度から相手見て喧嘩売りなよ、雑魚」
そう吐き捨ててから部屋を出て行こうとした。
しかし。
「ん、あれ?」
行く手は鉄の扉に阻まれて。
「何だよ、これ! マジキモイ! 死ね!」
コミュ障は力任せに扉を叩いたり、地団駄を踏んだりする。だが、そこはどうにもこうにも開きそうにない。
「これ、シリアルナンバー? こんなの分んないじゃん! あーもう死ねよ!」
がん。扉を乱雑に蹴る音。
「マジ最悪! これじゃあ、タクヤお兄ちゃんを助けにいけないじゃんか!」
そのとき。
「……うぐっ」
背後でうめき声が。
「ふえ!?」
びくん。震える体。コミュ障は勢いで振り返って。
「……う……あ?」
面白いように肺が強張り、彼は上手く喋れなくなった。
だが。
「……」
エイリはうつ伏せに倒れたまま。いや、その右手には自身の腰に巻いていたはずの黒帯が握られている。
「何だよ、驚かせやがって」
コミュ障はそれを奪った。金色の刺繍でそこにシリアルナンバーが描かれていたからだ。
「でも、雑魚にしてはいさぎがいい……かもね!」
それは彼にとっての最大限の相手を称える言葉。彼の放った一撃に耐え、そして成すべきことをして果てたエイリへの。
「ふ、ふん!」
慣れないことをしたせいか、コミュ障の顔は赤く染まっていて。だから彼は早々と鉄扉にシリアルナンバーを打ち込み、タクヤのいる部屋へと進んでいった
ぅゎコミュ障っょぃ。
ショタっ子です。




