第26話
「ほら、どうした? 何をうずくまっている? まだ決着はついていないだろう? お前の番だ。早く運命の魔弾をゴールに投げ込め」
「い、今さら……な、何を?」
当然ウキョウは立ち上がらず。
だから。
「早く投げろ。そうしなければ、今流したお前の黒歴史を世界中に配信する」
「な!?」
怯えた顔。訳が全く分からない。もはや彼は戦う意志など、勝利に対する意義など持ち合わせていないのだ。それなのに。
けれど邪気眼はにたにたと相手をいたぶるように頬を上げて。
「ただし――」
「え?」
「ただしお前の放った球がゴールに入っても、お前の黒歴史は世界中に配信される」
「は……? うぁ?」
意味不明。ボールを投げろ、ただしゴールには入れるな。それが何になるのか。
しかし。
「あはぁ」
「……」
しかしウキョウは邪気眼の顔を見てしまった。そして見出してしまった。その表情の奥底に潜む、強大な悪意に。
「……そ、そうか、お前は」
「早くしろ」
「ぼ、ぼ、僕から戦う意志をもいだだけでは飽き足らず、お前は」
「早く」
「お前は……」
そして放たれるボール。されどそれは力なく宙を泳いで何にも当たらず、何もかすめずただ地面へと落下して。
――お前は僕からバスケットボールに対する積み上げられた自信までも……。
ばたん。人体が床にぶつかる音。
「……」
それを見届けてから邪気眼は。
「あらゆるものを万差なく摘み取る光……ファイナル・タクティクス・ハイド(相手は死ぬ)……!」
両掌を倒れ伏した長身のウキョウに向けて突き出した。けれど当然そこから何かが放たれる訳でもなく。
「俺の勝ちだ!」
しかしそれでも邪気眼は満足げに笑った。
次いで。
「それでは聖戦の旧知を助けに行くか」
彼は最初と同じように左目に眼帯を着け、ウキョウの持っていたボールに記されていたシリアルコードを鉄の扉に打ち込んだ。




