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第24話
あれは部活の練習後のひととき。まどろみのような時間。
「ああ、今日もきつかったなあ」
ウキョウは他の仲間が帰っていく中、一人だけぎりぎりまで体を動かし続けていて。
「そろそろ帰ろう」
体を満たすだるい疲れ。彼は自主連に満足し、制服に着替えるため部室へと足を運んだ。
「……あれ?」
しかしそのとき視界に何かが映り込む。
「忘れものかな?」
一つの袋。なんてことのない、布製の。
だが。
「……体操服」
それはあるいは岐路だったのかもしれない。疲労でぼやけた頭が、思春期の少年の淡い好奇心が見せた幻想。
袋を手に取ると、ウキョウの鼻先を何か惹きつけられるような甘ったるい香りがふわりとかすめて。
「……」
気付くと彼は。
「……」
すぅー、すぅー。その物体に顔を押し当てていた。
「……」
その匂いの何と豊潤なことか。まるで手にしたことのない感覚。毛細血管の隅々まで沁み渡る壮大な多幸感。体の疲れを癒す天使のいざない。
だから。




