深緑の侵略
Taskeyにて掲載。長編化。
他、「異端者」シリーズとして数種類展開。
20XX年。
「それ」は突然現れた。
――――――――――否、涌いて出た、と言った方が正確かもしれない。
M41散開星団・おおいぬ座 で起こった超新星爆発。
その影響で、一部の人間の体組成が変化したのである。
DNAが急に変化したのか、はたまた、科学では説明出来ない何かが起こったのか、
「それ」は、深緑色の髪に深緑色の目をし、高度な知能を有する人間、 以上の何かとなり、世界中に存在し始めたのである。
「それ」らは、「異端者」と呼ばれ、当初はメディアのお騒がせネタや、研究対象となっていたが、次第に「それ」らのことが解り始めるにつれて、世界中で「異端者」排撃運動が始まった。
・・・勿論、人権団体、カルト教団など「異端者」擁護派も少なからず存在し、撲滅推進派と激しい論争、時には実際の戦闘を繰り広げたが。
20XX年現在、「異端者」について解っていることは次の四つである。
「それ」らが、特徴的な見た目であること。
「それ」らが、高度な知能を有すること。
「それ」らが、人間よりも強靭な身体能力を有すること。
なにより、「それ」らが、己を介して外界に影響を及ぼすことが出来るということ。
「異端者」達が外界に影響を及ぼすことが出来るという事実を最初に発見したのは、スペインにあるサンタ・アンジェリカ高等科学研究所付属病院の「異端者」観察・研究チームである。
一人の「異端者」被験者が森で研究者と一緒に散歩をしていた際に、運悪く撲滅推進派の最大勢力、「セルセラ・ホグーム」が彼を襲撃し、対戦車ミサイル、ロケットランチャー、小規模核爆発誘導弾などを「異端者」本人に対して使用したが、彼はそれらの攻撃全てを「反射」し、逆に襲撃者達を退けたのである。
その後、その「異端者」を担当していた研究者が実は「セルセラ・ホグーム」の実行部隊の一員であることが解り、研究所附属病院は閉鎖、研究は凍結、となったが、その事件をきっかけに世界の他の地域でも「異端者」の「奇跡」が研究され始めた。
「異端者」擁護派と「異端者」撲滅推進派との争いは増々激しくなり、
世界中の国々及びメディア及び政治家たちがこぞって「異端者」の利用方法を考え、
「異端者」以外の人々は彼らのことを様々に口の端に上らせた。
皆が「異端者」のことを考え、どう在るべきかを声高に喋り続けた。
―――――――――――――――「異端者」達を除いて。
210X年。
今まで差別・偏見・擁護・商用・研究・茶の間の話題の対象として世界中の人々に騒がれなかった日は無いと言っても過言では無かった「異端者」達が、初めて世界に対してメッセージを発信した。
強烈かつ痛烈なメッセージを。
手始めに世界10都市の空港及び惑星間連絡船の全ての通信システムを3分でハッキングし(茶の間では「インスタントヌードル的」というコピーが持て囃された)、
主要国の首脳を一人ずつ人外的な手法で暗殺し(茶の間では「敵対勢力の「異端者」雇用か!?」などといった憶測が飛び交った)、
全世界の交通網を一時的に麻痺させた(このころには茶の間で彼らを笑うものは消えていた)。
インターネットの動画配信サービス及び世界中の映像放送局を易々と乗っ取った「異端者」達が明言したことは――――――――――――――――――――
「我々は、自分たちが優れているとは思わない。人間が劣っているとも思わなければ、自分たちが人間と異なると思われることも苦ではない」
だが、
「我々は我々の外側で我々の価値を決めようとする人間たちには嫌気が差した。我々の技術で以て進歩していく人間たちを見るのは喜ばしいことだが、自分たちの望むものを自分たちが望むように創ることが出来ないのは、歯痒く、悲しく、痛ましいことである」
だから、
「我々は宇宙空間に自分たちが望む空間を見つけ、そこに移住しようと思う。ただ、もしかすると今まで人間たちが我々の技術で以て為してきたような惑星の管理・支配を我々も我々のためにしようと思うかもしれない。その過程で地球が我々の管理下に置かれるようになるかもしれない」
最後の発言に、人間たちは戦慄した。
「まあ、運が悪かったようなものだと思ってくれ」
以降、人間は自分たちが「異端者」の力を使ってやってきたことを後悔するようになる。
・・・・・・SF染みたパニックアクションを試みようとして・・・
いつものパターンです。