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窖の鼠

12月も下旬となり、小学校が冬休みに入る頃には、どんよりと曇った日々が続く。雪が降るほど寒いわけではないが、かといって暖かいわけでもない。


そんな毎日が鼠色の空の下、続いていたが、小学生たちはもうすぐやってくる冬休みにクリスマス、お正月へと思いを馳せていた。






「深夜ー、帰ろうぜー!」



深夜と呼ばれた少年が振り向くと、彼の親友である守永亜都(もりながあと)が手を振っていた。



「うん、今行く」



少年は中々に使い込まれたランドセルを背負うと、教室を出た。






二人の少年は帰宅しながら、色々と話をしていた。


彼らの周りにも、同じように帰宅途中の小学生がいる。


彼らの小学校は今日が終業式であった。


膨大な量の宿題を出されたが、彼らの頭の中では、「お楽しみ」の方が優先されている。



「なあ」


守永少年が彼の親友に話しかける。


「なに?亜都」


守永少年の親友は胸に「藤崎」と書かれた名札をつけていた。


「来年から、中学生だな」


「そだな」


藤崎少年が相槌を打つ。




「ちょっと前にも授業で説明されていたけど、『領域発動』って奴を習うんだよな?」


守永少年の言葉に頷く藤崎少年。



「まだよくわかってないけど、そうらしいね」



二人の真上にある空には、ここ数日と同じく灰色で、鼠色の、雲が敷き詰められている。


「それ使ったら何ができるかもわからないのにまた新しいことやんなきゃなんねーのかよ〜」



守永少年のぼやきに、それもまた尤もだと思いながら、藤崎少年は横断歩道の押しボタンを押した。



「亜都は勉強できるのに、勉強嫌いなんだね」



藤崎少年の、もう何度目になるかわからないツッコミ。



「いや、俺は勉強が嫌いなんじゃなくて、面白くない勉強が嫌いなんだよ」



これもまた何度目になるかわからない守永少年の弁明。



「そういえば、そんなこと言ってたな」


思い出した風な藤崎少年の言葉に、守永少年はがっくりと項垂れた。



「まあ、やってみなきゃわかんないっしょ〜。親戚の中学生の人は楽しそうにしてるけどね」



藤崎少年の励ましに、少しは元気付けられた様子の守永少年。


「藤崎真夜さんだっけ?あの人が楽しいならきっと俺も楽しめるはず」



「どういう理屈だよ・・・」



この三叉路で藤崎少年と守永少年は別れた。


「じゃ、また来年」


「新学期また会おうぜ」


そしてそれぞれ別の方向に向かう。




藤崎少年は寒空に目を向けつつ、家に帰れば炬燵と温かい昼ご飯が待っているだろうと思い、今暫くの我慢だと自分に言い聞かせ、曇天の中家路を急いだ。








十数分後。藤崎少年は、思いがけない光景を目の当たりにし。




数年後。思ってもみない数奇な人生を辿ることになる。


「模擬幻想試験」の数年前のお話。

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