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哀しみの赤
望んだものは、変化だった
欲したものは、変容だった
短剣を握り込んだだけで何かを成した気になっていた
栄光は遠く、平穏は悠い
仕出かしたことの重さは痛く、糾弾の声は昏い
現状を変える、ただ其れだけを願ったのに
待っていたのは途方もない代償と哀しみの赤
鮮血、鮮血、鮮血が跳ぶ
叛逆者に降るは赤い雪
黒鉄、黒鉄、黒鉄が跳ねる
裏切り者に降るは黒い雪
天上の鐘の音は響かない
叛逆が何も齎さないと知っているかのように
退却の鉦の音は鳴らさない
退ける場所が無いと知っているかのように
回生の雨が降る 重来の砂が舞う
退くことを知るのは愚か者だと嘲笑わんが如く
贖罪の黒が続く 哀しみの赤が積もる
変革には相応の代償が伴うと諭さんが如く