色えんぴつのきみどりくん
きみどりくんは、いろえんぴつのこどもです。
みどりお父さんときいろお母さんといっしょにくらしています。
さいきん、きみどりくんは、なやんでいました。
「ぼくは、どうして名前が『きみどり』なんだろう」
きみどりくんがかよう学校の友だちの中には、「そらいろ」ちゃんや、「えめらるどいろ」くん、「みかんいろ」ちゃんに、「しゅいろ」くんと、みんな、もののいろの名前の子がいます。
それなのに、きみどりくんはお父さんの「みどり」とお母さんの「きいろ」を足しただけ。
それをかっこわるいと思っていましたし、友だちにも、
「きみどりくんは、どうしてきいろとみどりを足したような名前なの?」
とたびたび聞かれていました。
きみどりくんはそれがいやでいやで、たまりませんでした。
いろえんぴつの学校は、午前中だけで、午後はありません。
いつもは友だちと仲良く公園であそぶきみどりくんでしたが、さいきんは友だちとあそぼうにも名前のことが気になってなかなか輪の中に入れませんでした。
そして、一人で森の中をさんぽしていました。
そんな、ある日。
今日も午前中で学校がおわると、きみどりくんはまっすぐおうちに帰ってしゅくだいをしたあと、一人で森の中にでかけていきました。
「はぁ~あ、もともとある色の名前を足しただけ、なんてかっこわるいし、みんなに理由を聞かれても答えられないや・・・」
きみどりくんがため息をつきながら、森の川辺で石きりをしていると、
ひょっひょっひょっひょ。
というふしぎな声が聞こえてきました。
「なに!?」
きみどりくんがびっくりしてかおを上げると、金色のかみの毛のおばあさんが木の上に立っていました。
いろえんぴつの国で、もの知りだけど変わり者で有名な、きんいろばあさんです。
「きんばあ!!」
きみどりくんが名前を呼ぶと、きんいろばあさんはニッカリと笑いました。
「どうしたんだい、きみどり坊や。ため息をつくと、ぴょうっとしあわせが逃げちまうよ」
きみどりくんはいいことを思いつきました。
きんいろばあさんに悩みを聞いてもらえば、もの知りなきんいろばあさんなら何か答えてくれるだろうと思ったのです。
「あのね、きんばあ。ぼく、相談したいことがあるんだけど・・・」
「そうかいそうかい。それなら、あたしの家に来な」
きんいろばあさんは二つ返事で、きみどりくんにあとをついてくるようにと言いました。
* * * * * *
きんいろばあさんの家は、森のおくにありました。
ここで、きんいろばあさんは、ぎんいろじいさんといっしょにくらしています。
「さあついたよ。いらっしゃい」
「おじゃましま~す」
きみどりくんがきんいろばあさんの家の中に入ると、甘いいいにおいがただよってきました。
みてみると、ぎんいろじいさんが何かを作りながら、うつらうつらとしています。
「これ、じいさん!そのままだとクッキーがこげてしまうぞぃ」
きんいろばあさんの声にはっとしたぎんいろじいさんは、あわててクッキーを取り出しました。
「あちち。あちち」
ぎんいろじいさんが、ふうふうと手をさましています。
クッキーはこげてはいませんでした。
「まったく、じいさんは・・・」
きんいろばあさんが、あきれたようなかおをしています。
「すまんすまん。ついねむくなってな・・・・・・」
ぎんいろじいさんはめがねをずり上げながら、あたまをポリポリかいています。
「ん?めずらしいお客さんがいるな」
ぎんいろじいさんの大きな目玉がきみどりくんの方を見たので、きみどりくんはあわてて礼をしました。
「きいろさんちの、きみどりくんだよ」
きんいろばあさんはあたたかいお茶をいれながら、きみどりくんに座るように言いました。
「ああ。きいろさんとみどり氏のこどもか」
ぎんいろじいさんは手をポンとうちました。
「ちょうどクッキーもやけたころだし・・・もうじきもう一人、お客が来るんだ。ちょっと待っていようか」
きんいろばあさんはぎんいろじいさんの言葉にうなずきながら、お茶をひとのみ。
「待つついでに、きみどり坊やの話を聞こうじゃないか」
きんいろばあさんのきんいろの目が、きみどりくんを見ています。
きみどりくんはさいきんあったことを話しました。
* * * * * *
すべての話を聞きおわったきんいろばあさんと、ぎんいろじいさんは大きくうなずいたあと、お茶をのみました。
きみどりくんはどきどきしていました。
「うん、きみどり坊やの相談に答えようか」
「そうさね」
きんいろばあさんとぎんいろじいさんがかおを見合わせたそのとき。
「こんにちはーーーーーー!!」
とびらがガチャンとひらかれ、うつくしい色のかみの毛のかわいい女の子が入ってきました。
「おお。やっときおったか」
「待ちくたびれたぞい」
きんいろばあさんとぎんいろじいさんが、ほほえんでいます。
「君は、だあれ?」
きみどりくんは、思わず聞いてしまいました。
その女の子はうふふとわらって、自己しょうかいをしてくれました。
「私は、あかむらさき。森の向こうに住んでいるの。君は?」
きみどりくんは、おどろきました。自分と似たような名前だったからです!
「ぼ、ぼくは、きみどり!森の手前の草原に住んでいるんだ」
「そうなの。よろしくね」
きみどりくんは、あかむらさきちゃんとあくしゅしました。
テーブルの上にぎんいろじいさんが作ったクッキーが並べられます。
「さあ、たんと食べな」
「「いただきまーす!!」」
ぎんいろじいさんが作ったクッキーはとってもおいしく、元気の出る味でした。
みんなでクッキーを食べおわったあと、きんいろばあさんが言いました。
「きみどり坊やの悩みはもっともなものじゃ。どうしてその名前かはおまえのお父さんとお母さんに聞きなさい。だがの、他にも似たような名前の子が居るんじゃ、別に変なことじゃないと分かったじゃろう?」
きみどり坊やは大きくうなずきました。
そして、明日もあかむらさきちゃんと会う約束をしました。
* * * * * *
その日、家に帰ったきみどりくんは、みどりお父さんときいろお母さんに自分の名前のゆらいを聞きました。
みどりお父さんは、きみどりくんのあたまをなでながら、こう言いました。
「きみどり。お前の名前が「きみどり」なのは、お父さんとお母さんのいいところを持ってほしいと思ったからなんだよ」
きいろお母さんも、きみどりくんをなでながら、みどりお父さんと同じようなことを言いました。
「お父さんの目にやさしいところと、私の元気いっぱいのところをみならってほしかったのよ」
きみどりくんは、大きな声で、
「ぼく、お父さんとお母さんみたいになれるよう、がんばるよ!!」
と言いました。
~おしまい~
・・・・・・童話とか絵本のテイストを目指して、あえなく撃沈。
漢字は比較的少なめになっています。読みにくいかもしれません。