外伝 スセリ封印 犬と少年
シャイニングシーサー
ニッコウザル
ヤタガラス
いずれも消耗性神具『キビ団子』によってミコトの支配下にある高ランクモンスターだ。
それを少女の姿をしたスセリに差し向けるのは絵的にヤバい。
スセリは速攻一番とミコトに突っ込んでいったがシャイニングシーサーが立ち塞がる。
スセリは慌てることなく地面を殴り抜ける。
「うっとうしいっ。まとめて焼け焦げろっ!!」
拳の先から地面が裂けて下から高熱のガスが吹き出す。
「まずいっ、ポチッ!!」
シャイニングシーサーはミコトを背に乗せ跳躍して躱すが今度はスセリは宙に拳を振り上げて再び下す。
上空から吹いてきた下降気流が高熱のガスをミコト達に誘導する。
「鳥っ!!」
だがそれはヤタガラスの羽ばたきにより相殺された。
お返しとばかりにヤタガラスは天高く鳴く。
「ホシィッ」
空から光線がスセリに降り注ぐ。スセリは咄嗟に躱したが、乙女の柔肌には余波だけでも傷がついてしまった。
しかしその傷よりも気になることがある。その技には昔姉から聞いた覚えがあった。
母を殺した者の技だ。
そう、ヤタガラスとはかつてこの国でスセリの母を、スセリは知らぬが遠き地で最愛の姉を屠ったサンコウチョウに他ならない。
長い年月を得て、そして強大な魔王と戦ってその存在をさらに高みへとすすめたのだ。
「なんかよくわからないけどアンタのその声サイッコーにムカつくわ。それ以上囀りたいならならあの世で囀ってて。」
そう言ってスセリは両手を地面につけ力を込めるが、それは飛び掛かってきたシャイニングシーサーを躱すために中断される。
「今だ猿。」
そうミコトは命ずる。スセリはしまったと思い背後を振り返ったが、
ニッコウザルはそっぽを向いた。
「…………おい猿。」
「……………なんかご愁傷様ね。」
基本的には犬が動き、時折思い出したように鳥もけだるそうに動く。
そして猿は……眠っている。
「いけポチッ電光石火で決めるんだ。」
高速の動きで先の先をとる攻撃に、スセリは
「コイツも要注意ね。」と警戒する。
そうミコトに命令されたポチことシャイニングシーサーは唯一ミコトに能動的に従うモンスターだ。
なにせ、仔犬だったポチを拾い育てたのはミコトだった。
当初ミコトが陰陽師を目指したのはポチの為だった。
モンスターであるポチを飼うことには周囲は大反対した。
何せミコトはやんごとなき家の跡取りだ。もしもがあっては困る。
しかし、ミコトは考えた。陰陽師になれば、だれが見てもポチを支配していると思える存在になれば誰にも文句は言われない。
そう、当初はそうだった。あの日までは。
ポチにとってミコトは家族であった。
親から離れ衰弱しきっていたポチを救ってくれたのはミコトだ。
他のニンゲンがポチを苛める中守ってくれたのもミコトだった。
いつかはそんなミコトを護りたいと、護れるようになるとそう思っていた。
あるときからミコトは変わった。「神の声を聞いた。」そのようなことを言っていた時期だ。
急に不思議な道具を多く持つようになり、どこからかやってきた鳥と猿に団子を食わせると二匹は従順な部下となった。
俺には必要ない。なぜなら俺にはそんなものが無くてもミコトの味方だからだ。そう思っていたが、ミコトはポチにも団子を差し出した。
ポチは悲しかったがその団子を口にした。その団子には『瞋』という字が書いてあった。どこか憎しみの味がした。
ポチはこの団子を作ったものを憎んだが、ミコトに対しその感情を向けることは無かった。
『キビ団子』のキビとは忌日。忌まわしき力『三毒』と『日』の力を与え、代わりに支配下に置く神具である。
ポチはその日を境に静かなる狂犬となった。
犬が自発的にスセリに飛び掛かる。
鳥は命令されればスセリに襲い掛かる。
猿はわけもわからず自分を攻撃した。




