外伝 スセリ封印 話を聞かない男
扶桑帝国
今まさに魔王の襲撃を受けんとしている帝国である。
その王朝は二千年以上前から続く他に類を見ない。
この国には神代の国を治めた偉大な神がいたとされるが、実際にはただのストーカー気質であった。
今回はそんなストーカーの話。
実はこの話ができたのはそんなに昔の事ではなく
千年前程度の話であった。
二体の元魔王の融合憑依体、コズミックホラーモスをツノトンボの魔王と倒した同じく魔王であるスセリ。
魔王魔王とよく魔王が登場するが、
厳密には大罪持ち以外の魔王は細かい定義においては魔王ではない。
しかしその意味においても彼女は元魔王であった。それはかつての遠い遠い日の話。
その時の記憶は最近になって彼女はうっすらと思いだし始めていた。
そんな時だった。
そいつが来たのは。どう見てもこの時代においては裕福そうな青年。
何処か陰陽師っぽいどこか貴族のような服装でそいつはいた。
当然治安なんて、何それ美味しいの?なこの時代。何度も青年を襲うならず者はいたが全て返り討ちにされた。
というか、そのならず者たちは大概に向こう見ずだ。
なにせ青年は3体のモンスターに守られているのだから。
その三体は
犬、猿、そして鳥のいずれも高位のモンスターである。
そして青年はヒトでは決して届かない力を持った存在。魔王『まつろわざるもの』の住処に来た。
魔王を調伏しに来たのだ。
この青年は元をたどれば由緒正しい高位貴族の生まれでありながら陰陽師に憧れた変人だ。
しかしそれは良かったのかもしれない。貴族の華やかな生活の中ではその才能が開かれることなんてなかったのだから。
スセリの住処まで来た青年は周囲の木々を縄と印で縛りを入れ、その中央で煙を燻す。
他者の家にやってきて煙で燻すなんてされて腹が立たない奴もそういない。
しかも煙が苦手なうえ住人が短気ならなおさらだ。
そして住人であるスセリはどちらかっていうと十人中九人が短気だという程度には短気だった。
住処を煙で汚され怒りブンブンのスセリはやった奴死刑ね。なんて思いながらやってきた。
ちなみにこのブンブンは羽ばたく翅の風圧で何とか周囲に煙のにおいが残らないように頑張っている音だ。
三匹と青年の姿を発見したスセリは決めた。
超ぶっ殺す、と。
しかしこの煙はただの煙ではなかったのだ。
煙が晴れた時青年、ミコトはスセリに対し思わず、
「なっ!?………結婚して下さい。」
「えっ?何それ意味わからない。…………ってえぇーっどうなってんのよコレ。」
神具、若魂香。またの名を弱昆香とも呼ばれるその神具は煙を浴びたものを一時的に最も弱い時期の姿に変えてしまうのだ。
特殊能力等はそう変わらないものの姿が幼虫に変わるだけで大体の昆虫は超パワーダウンしちゃうから至高の一品だ。
しかし魔王が降り立った煙の中から現れたのは恐ろしい蜂の幼虫などではなく
現在のこの国では見ない革新的で気の強そうな、それでいて何処か儚げな不思議な服を纏った少女だった。
「ちょっと説明しなさいって言ってるでしょっ。」
「うん…ひとまず落ち着いて欲しい。そして結婚してください。」
「いや、前後の文脈おかしいでしょ。」
「俺の名前はミコト。君の夫の名前だから覚えておいて。」
「ミコト…?あんたもしかして電気とか出せるの?」
「デンキ?」
「オンリーでマイでレールガンな力の事よ。
はぁ、流石にミコトだからってそれはないか。あぁ、こっちのはなし。」
「はは、何言ってるのかさっぱりだけど俺の妻は面白いなぁ。」
「もうどうでもいいから直しなさいよ。そしてそのあと死ね。」
「嫌だ。直す必要性が全くない。だって蜂と寝る気はさらさらないからね。」
「………私蜂なんだけど…。」
「でも今は人間だ。ところで名前は?」
「さっきから話の前後がおかしいんだけど。」
「名前は?」
「他人の話を少しは聞け。」
「名前は?」
「話が進まない。………スセリよ。これでいい?さっさと直しなさい。」
「よしスセリか。いい名だ。結婚しよう。」
「話が進まない。………もういい、アンタを殺してそのあと考えるっっ!!」
「全く気性が荒い御嬢さんだ。だがそんな君を調教するのも一興だ。
世の中には十才ほど年の離れた幼女を数日調教し続け妻にした偉人もいるからね。」
「それなんてHIKARUGENJI。……ってそうか今めちゃくちゃタイムリーだった。」
「よし、3匹ともいけっ。……殺すのだけは駄目だからな。」




