天奏高山帯奏話 第6音
今日もベルは幼虫たちを相手に音楽教室をやっている。
ベルの仔だけあって普通の幼虫達とは知能が違う。
音楽がわかる程度には頭がいいのだ。
こういうことは幼いうちからやっておくことに損はない。
一番上の子は頑張っているようだが、
一番下の子はおねむだ。
真ん中の子は下の子を撫でながらボーっとしている。
ラララ~。
そんな歌声が今日も天奏高山帯に響く。
地元住民が天使の歌として自分たちの恐怖と無力感を欺瞞して子供たちに教えているベルが奏でる人外の音色だ。
そんな中、今日も招かざる客がやってきた。
百匹近い数の巨大な鳥モンスターだ。
母親と違い目が見える娘たちはその姿を見て脅え始める。
三女は完全に泣いてるレベルだし、
次女も声が出ない。普段から無口だがそういうことではない。
長女はお姉さんっぽいところを見せようとして入るが妹たちが相手ならようやく気付かれていない程度で、
母親から見れば、というか声や体の震えを聞けばすぐにわかる。
後に山岳の三女神だとか、はたまた三鬼神だとか言われる彼女らもこの時点ではただの無力なょぅι゛ょに過ぎない。
「おかーしゃま きしゃうの。しゅごいのがいっぱいきしゃうの。」
三女がょぅι゛ょ特有の舌足らず的な喋り方をするのを聞いて、
(うわ~なんかエロいですわ~。)と娘の将来に不安を感じるぐらいにベルは余裕だ。
「……こわい。」
(無口な仔の脅えた表情はそそるものがありますわね。)なんて母親にあるまじきことを考える程度には
ベルは優雅だ。
「おかあしゃま。だいじょうぶでしゅよね。」
妹の前で気張ってこそいるもののもうそろそろ限界な長女に対し、
「大丈夫。なんなら向こうの峰を超える前に全て終わらせてしまえばいいのでしょう?」
そうやって娘を慰める程度にはベルは母親だった。
修羅のように鳥たちを一匹残らず刻み尽くしてくるのは容易だが、
それをしてしまうと、巣から離れた時に娘たちは不安になるのではないかともベルは考えた。
それはそれで可愛らしいが、あんまり苛めすぎるのもよくないとも理解している。
だからシンプルな方法で終わらせる。
ちょうど巨大な鳥たちが一つ向こうの峰を越えようとしていた時、
「墜ちなさい。」
天使の声が響き渡った。鳥たちは一斉に墜落して動かなくなった。
ちなみにその近くにたまたまいた登山中の蟹や人間も思わず崖から飛び降りたが、
そんなことは美味しく鳥を食べている娘たちを見て満足げなベルは気にしない。
ベルさんちの今日の教訓。
「とりさんはけっこうおいしい。」
『ラ』それは羅。悪鬼羅刹の長たらんはその凶悪さ。




