天奏高山帯奏話 第5音
最強の魔王、大魔王、星の絶望、予言の仔、氷結地獄の主、様々な異名があるがそれらの指し示すものは一つ。
この世界における星自体を除けばぶっちぎりで頂点たる存在。
流氷雀蜂の女皇デュカリス=スペルヴィア。
そんな彼女は自身が起きているだけで広がり続ける極点の氷を制限するためという名目で普段は永き眠りについている。
大体復活前になると未婚の王族種の蜂達が歓喜し、復活の義を執り行う巫女の役目を負った蜂達が必死に動き始めるので、
蜂族から見れば多分その兆候はすぐわかるようだ。
人間の目線で見ると、時期でもないのに空に多くの流氷雀蜂が飛び上がっていたら
何処かが国単位で滅ぼされる兆候とかそんな感じだ。………詳しいことは本編で。
とにかくそんな魔王たちの仲でも頭一つ分どころではないぐらいぶっちぎったデュカリスは時折起きて、
何かしたり何もしなかったりして再び眠りにつく。
普段と違い予兆もなく起きたデュカリスに周囲の蜂は大慌てだ。
そのうえデュカリスは寝起きの運動は体に悪いという娘の話に、
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」
的なニュアンスのことをいって超音速で世界旅行に行ってきた。
最早海の氷の中に巣を作って泳ぐのがメインな生き物とは思えないチートっぷりだ。
暇潰しに砂漠の一部を凍らせてみたり、海の上を凍らせたり、島一つを凍らせたりいろいろしながら
デュカリスは遂にベル・アルモニカの住まう天奏高山帯にやってきた。
ヤッホー的なことがしたくて一番高いところにやってきたとき、
「デュカリス姫っ!?」
急に呼び止められてこのあたりに知り合いの蜂っていましたっけ?なんて感じでデュカリスは振り向いた。
「魔王級か…。」
「えぇ…。」
「見覚えは………ないな。」
「……………………ですわよねー。」
「ところで、………私を起こしたのは何故だか説明してもらおうか?」
色々諸事情あってベルが歌っていた歌が眠りについていたデュカリスに作用し起こしてしまったのだ。
何処か長距離から娘たちにも気づかせず直接デュカリスを呼ぶ声の主に対し、
娘たちに何かあってはとデュカリスは強引に娘たちを置いてきたのだ。
途中にダミーとしての氷を生成しつつ。
一見駄目母で事実駄目母でありながら、時にはいろいろ配慮することもあるのがデュカリスの妹とは違う点だ。
デュカリスに何処か相手の昆虫が知り合いの様な感覚で接してくるが、
思い出せないのが1割と、思い出す必要もないというのが1割と、
蜂以外は最終的には敵だから毅然とした大魔王の姿であろうというのが8割だ。
「はーちゃんって呼んでもわかりませんわよね?」
「さっぱりだ。とにかく邪魔するようなら死んでもらう。」
過去の記憶を知識としたベルに責める資格など無いが、
以前の世界の中で最も鮮明に残っていたものに否定されたことはショックだった。
もはや以前の世界の繋がりは切れたと思ってもいい。
ならばせめてこの世界でのつながりをベルは求めたが、
以前蜂であったことを明かすのは彼女の中で最大限のタブーだ。だからせめてと、
「…極東の蜜蜂の巣に一度御行下さい。」
「……?どういうことだ。」
「行けば、わかりますわ。巣の祖がお待ちしています。」
「我が妹が?……生きていたのか?」
デュカリスは尊大な態度を見せようとしながらも喜びを隠せない。
時折不老のものが大罪の魔王以外にも発生することがあるが、本当に稀な例である。
まさか自身の姉妹がそうであったとはと、
なぜ目の前の虫がそのことを知っているかなんてことよりも妹に会いたくなりもう心は既に極東に言っている。
しかし、
「巣の女王はお隠れになりましたわ。」
デュカリスは冷水を浴びた気分になる。
…いや流氷の下で生活する彼女らにとって冷水如きお風呂のようなものだが、あくまでものの例えだ。
「…………まさか、貴様が…。」
周囲の気温が急激に低下する。
「違いますわ。」
正直に言えばベルの中で自身の生でメリッサが死んだというのは今でもくすぶっている感情だが、
それをそのまま言ってしまうと、
他種であるベルが蜂であるメリッサを殺したと取られて即、氷殺だ。
だからといって元娘ですなんてことも言えそうにもない。
そういうことはあくまで思考の中までに留めておく。
「…ならばいい。私は忙しいのだ今から極東にいかなければならないからな。
次、無駄におこしたら承知しない。」
そういってデュカリスは極東へ高速で飛び立っていった。
言い忘れたが、デュカリス=スペルヴィアは他者の心が読み取れるのだ。
『ソ』それは甦。封じられし魔を開放せんとする。どこかで眠りし魔王たちが目を覚ます。絶望のモーニングコール。
デュカリスが去った後のぬくもり、むしろ冷たさといった方が正解かもしれないが、
とにかくそれで興奮したベルは想像妊娠して3匹の仔を産んだ。
アマネ 長女
得意音域はソプラノ。
しっかり者であろうとする苦労症。
スズネ 次女
得意音域はメゾソプラノ。
周りがよく見えているくーるさん。
ヒビキネ 三女
得意音域はアルト。
皆で歌うのが好き。




