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天奏高山帯奏話 第3音 前編

あるとき誰が見ても大層仲の良い双子の兄弟がいた。父親は昔それなりに名をはせた冒険家で、

母親は父親が利用していた熟練の鍛冶屋の娘だ。


父親は今では冒険家を引退し地元のトマトを利用したパスタ屋をやっているが、

冒険者になりたいという息子二人には戦い方を教えていた。


兄弟は基本的に能力が拮抗していたが、兄は若干父親よりの戦闘スタイルで弟は若干我流寄りだった。

どちらかといえば弟の方が才能があったようで父親は弟にこそ自分のスタイルを受け継いで欲しかったようだ。

しかし兄の方は持ち前の向上心で自主的に励み、一度も弟に負けたことは無かった。弟は兄を尊敬しているようだった。

そんな二人を村中が期待の目を向け、祖父などは二人の為の防具と武器をわざわざ特注で成長に合わせて作っていたほどだ。


そして二人が15歳になった日の夜、祖父から今までの子供用の武器とは違い、戦うための武器を渡された。

冒険者ならば喉から手が出るほど欲しい特級品だ。


一つは父親が使っていたサミットクラブというマウンテンクラブの進化系の蟹の鋏を加工した刃の広い二槍の二股槍、

鋏一つだけしか見つからなかったが、

元の鋏が大きかったので世界の王侯貴族たちに多く注文された中でも父親の分は確保できていたのだ。

勿論この武器は誰にでも売っていたわけではなく、

冒険者としても有能で、もしや義理の息子になるかもしれんと娘の態度から気づいた鍛冶屋が作り上げた至高の逸品だ。


其れを再度打ち直したのがこの『山頂蟹双鋏槍』だ。

父と祖父の作りし超一級品の武器。

是は父親のスタイルを正確に受け継いだ兄が受け継いだ。


弟に渡されたのは持ち手以外が刃になっている大弓。絃は5本もあり同時に幾つもの矢を放てる上、非常に強靭である。

そして、剣というにはやや細すぎるものの見た目とは裏腹に高強度の片刃の短剣。

その核には『音』を封じ込めた結晶が埋まっている。

その弓の銘は『天響大弓』。短剣の名は『詠奏剣』。どちらもサミットクラブの鋏に付随していた欠片を使用している。


二股の槍、、刃のついた弓。珍しいがそれ自体はこの地域での伝統的な武具に過ぎないが、

孫フィーバーでいろいろおかしくなってしまったでんじゃらすなじいさんは凄い、

そりゃもう人間の限界を超えたような凄い武器を作ってしまったのだ。





しかしそんな周囲の期待を裏切るかのように、吹雪の夜に弟は消えてしまった。














そしてその9年後、昔弟がいなくなったような吹雪の日、兄は帰郷していた。

僅か24歳にして最高クラスの冒険者となっていた兄は弟の事を思い出していた。

あの日もこんな雪で天使が歌う日だった、と。

あの時のようだ。そう言えばあの日から9年にもなるのか、弟の声がもう一度聞きたい…、

そう呟いた時だった。




「僕も合いたかったよ、にいさん。」

「クエ…ルダ?」

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