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第60話 廻り合う2匹

乱入者を見た時にベルは思った。

なんて、なんて神々しいのですの……。



その姿はかつて王家に伝わり潰えた伝承。

伝説の古代種、昆虫族の旗頭、溢れんばかりの覇を放つ『星』に反逆せし『まつろわざるもの』。

アマツミカハバチの進化直前であった姿。『ハオウバチ』。


神々しいのも当然だ。

本来はバグズ最強の戦力、魔王デュカリスのスペアとして用意され、

デュカリス死亡時にバグズの最大戦力として『傲慢』を奪い返し取得することを期待された、

デュカリス=スペルヴィアに準じるスペックの存在。

神々しさ如きないわけがない。





でも、貴女は、貴女はもしかして……


乱入者に何かを感じていたベルとは違い、ムリダスは、




「何じゃお主は、邪魔じゃ。後で喰らってやるからかえっておれ。」


「邪魔とはずいぶんなご挨拶ね。私の大切なものを汚してくれちゃってこちらは怒り心頭なんだけど。

あんたがやったのかって聞こうと思ったけど、―――――その身体を見る限り聞くまでもないわね。」


「全くごちゃごちゃ煩いのお。」


「あんたがあの子を苦しめてくれたお礼をしなきゃね。

可愛い妹の子孫の頼みだ直々に殺してやろう。この『スセリ』様がね。」












普通なら感動の再開となるはずなのだが、そうはならなかった。

スセリは面影を残しているのに対し、ベルはもう蜂ですらないからだ。



ヤバいですわ。この姿では排他的な蜂族にとっては只の敵でしかないですから。私の『力』がばれれば、

下手をすれば音系のスキルが姉から奪ったものだと思われればスセリにとってはまさしく仇。

なんといいますか、今のスセリ非常に強そうですし、なんかブチ切れてて凄く怖いですわ。

そんなことを考えていたら、




「あっ、ちょっとそこのあんた?」


「はっはいぃぃぃ、なっなんでございますでしょうかスセリ様。」


「闘ってるとこ横針入れて悪かったわね。でも邪魔しないで。コイツは私の敵だから。」


「はっはいぃぃ、了解ですますございますぅぅ。」



思わず語尾がおかしくなってしまったベルであるがそれも当然であろう。

だって下手を打てば(元)姉妹同士で殺しあいになるかもしれないのだ。それに今日のスセリはちょっと怖い。



「じゃあ問題ないわね。」

そういってスセリは針をムリダスに穿つ。



しかし、柔らかく変形する身体は刺された場所に合わせへこみ、大した傷はつけられない。

やはりスセリが付けた傷も時間を撒き戻すかのようにすぐに塞がっていく。

だが、スセリはこの程度で諦める物わかりのいい(おんな)ではない。


「一度で駄目なら、二度、三度っ!!」


再び刺し穿ちに行くが先程と違い何度も針を刺し続ける。

その傷跡から、『支配』の力をスセリは打ち込むが、2匹分の魂があるムリダスは互いを呼び合う形で『支配』を否定する。


ならばと地面に降り立ち、地面を刺し穿つとその先から噴火したマグマがムリダスを襲うが、

それも先程ベルを弾き飛ばした混沌とした力によってかき消される。







「不思議な話ね。あんたほどの実力者がここ最近になって初めて知られるなんて。

普通はもっと長く生きてないとそこまで強くはなれないはずなんだけど。」


「蘇った拙者を見た目通りの年だと思ったら大怪我するぞ。」


「…『黄泉帰り』ね。でも蘇ったとしても、多分幼虫でしょ?その身体。だったらおかしいのよ。」


スセリの疑問は尤もだ。

以前の肉体ではなく幼虫に憑依したムリダスの体はそう長く生きていないはずであり、

魂だけで強くなるにはあまりにも異常すぎる。


その答えは、『時間』だ。永く生きたムリダスにとってここまで幼い身体は弱い上に不快でもあった。

そんな意識が作用したのかはわからないが、ムリャシュゲの部分が蘇生を可能とするスキルを変質させ失ったように、

ミダスであった部分もまた、一つの対象しか止められない『時間停止』を変質させ、

恒常的に己の体細胞を『超加速』させたのだ。加速する肉体と再生系のスキルが合わされば、

傷など瞬く間に再生する。その上、自称すぅぱぁなぼでぃだ。圧倒的である。

凄いけどかっこよくはないけどただただ圧倒的である。




そんなムリダスはスセリを逆に支配してやろうと、体中に浮き出ている口から呪詛の念を作り出し、

陰陽師の部分を使って支配の唄として発現させる。



だが、その程度の呪詛の念如きで縛られ操られるほどスセリは弱くないので問題は無かったのだ。







しかし、ここにはそれでもスセリの身を案じてしまうものがいた。

呪いの『唄』を強引に『歌』で打ち消す。

「あの人の甘い声が私を導くの」

よりにもよってその歌はかつてスセリが幼き日々に何度も聴き、いつか再び聞ける日を待ち望んでいたあの歌だった。


それに、ただただ声が大きい程度で呪詛の念がかき消されるなんてことはない。

何かしらの『力』が必要なのだ。






「そのっ………『力』はっ……」

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