第57話 れっつごー
その婉曲かつ繊細であるが若干陰湿な国民性ゆえか呪いの分野が発展した国がある。
その名は扶桑帝国。 建国以来王朝が一度も変わったことのない類を見ない国家である。
帝国歴 710年
権謀術数の世界、呪い呪われ困った時には助けてもらおう陰陽師をモットーに、
取り敢えず呪いが発達していった時代である。
とある主流ではない零細陰陽師の家系に何時からか伝わる秘術があった。
その内容とは、
午前二時が過ぎたころに虫の血で染めた細い糸を芯にした術者と同じ種族の血で染め上げた縄で円を描き、
その中で縛るなどして動きを封じた蚕のモンスターの幼虫を用意し祝詞を唱える。
3分ほど祝詞を唱えていると、突如蚕のモンスターが震えだした。
震えだした蚕は蚕の中から別の蚕が生まれたかのように脱皮した。
先程までと違うのは暗い深緑色になっていることだ。夜に見ればもう黒といってもいいかもしれない。
新たにそこにいたものはミステリアスホラーワーム。
実に奇奇怪怪な悍ましい虫である。呪いの影響かそうでないのか様々な肉の残ったような頭蓋骨の模様が、
そのぶよぶよした体に浮き出ている。一応蚕の幼虫に区分される新種のモンスターである。
脱皮したことで拘束を解いた怪蠱虫は陰陽師にすり寄るように近づいていく。
「おぉ、成功したぞ。これで陰陽師界の人気者は俺様のものだ。
早速命令してやろう。この都の陰陽師をやっつけてくるのだ。
ようやく俺様がナンバーワ―――」
そういった陰陽師はちゃんと命令通りに動いたミステリアスホラーワームのエサとなった。
怪蠱虫のぶよぶよした、だらしない身体にまたひとつ人面模様が追加された。
別に元々制御も何もできておらず、単純に殺されただけだったのだが制御出来ていてもそうなっていたであろう。
その時は「『俺様以外の』陰陽師をやっつけろ」というべきだった。
まぁ、どっちにしろマヌケは死んでいたという話。
しかし、主流になれず人気のないのも頷ける間抜けな陰陽師であったが、
その力の量は確かだった。
おつむがしっかりさえしていれば勇者パーティーにギリギリ参加できそうにない程度の実力は持っていたのだ。
だから、幼虫を苗代として危険なものを冥府から呼び寄せてしまったのだ。
「サル達が随分と偉くなったものじゃな。
このミダスとムリャシュゲの融合体、ムリダス様を操ろうなんて。」




