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第54話 ただしイケメンに限る

尋常に勝負

ムリャシュゲはそういうや否や、身体を丸めてタイヤのように転がってきた。

まるで、宣戦布告直後に真珠湾爆撃を決めた日本軍の様な速攻攻撃であった。

その威力も恐ろしく、

進路途中にあった切り株が粉々になっているあたり、その身体の硬さと重さがうかがえるであろう。


一見特殊な力は使っていないようだ。攻撃手段は至ってシンプル。

重量と速度を利用した丸まって回転しての体当たり。ただ其れだけである。

しかしシンプルだけに効果は高い。

軽くてスレンダーなモデル体型なベルがそれを受ければただでは済まないであろう。


しかしそんな前ふり宣言をされた一発目から裂けきれないほどベルの回避能力は低くない。

ベルは紙一重で、しかし余裕の表情でそれを躱す。

躱されたムリャシュゲは転がりながら向きを変えるともう一度ベルに襲い掛かってきた。

再びベルがそれを躱し、背後の大木にぶつかるが、その大木を破壊しながらもぶつかった反動を利用し、

ピンボールのようにベルに向けて跳ね返る。

しかしベルはそれを躱す。また今度は大岩に当たるが大木同様破砕しながらその反動で跳ね返り再びベルを襲う。

躱す。壊して跳ね返る。

躱す。壊して跳ね返る。

躱す。壊して跳ね返る。


周囲が更地のようになった時にムリャシュゲは言った。

「御嬢さんは後ろにも目がついてるでござるかっ?」


「そんなはずないでしょう。少し耳がいいだけですわ。」


「………ふふ~む、そうだ。場所を変えるでござる。あの洞窟で戦うでござる。」


勝手にそういって普段住処にしている洞窟にムリャシュゲは転がっていった。


「……勝手に行ってしまいましたわね。」

ベルは此処であったことをなかったことにして無視してどこかに行こうかとも考えたが、

こんな風が気持ちいい場所を去るのがもったいなく、

あのダサキモい雄をとっととコロコロしてしまおうと考え直した。


「さぁ、ぶちころがしますわ。」


見た目やセンスがダサいというだけでこうも冷たい仕打ちを受ける。

女の子は結構残酷なのだ。男の子は相手に容姿を求めることと同様に、

自分たちもそれを求められているということをもう少し自覚した方がいい。

男たちは言葉上だけは「優しい人が好き」だとか、「性格が合う人が好き」だとか「化粧が濃くない人が好き」

だとか言っているが、その前提に容姿がいいことが前提につく。

最後の化粧が濃くない人が好きだというのはすっぴんで美人がいいという話でしかない。


しかし女性が言う、「優しい人が好き」も、イケメンであることが前提だと頭で理解していても、

心の心底奥から理解している男は珍しい。

自分の欠点を真正面から向き合うことは、欠点の大きなものにこそ厳しいことなのだ。

よくアイドル声優は誰にでも優しく見せているが、

オタクから見てもキモいオタクは、流石にアイドル声優だって心の中では多分苦笑いだ。

でもゆか○○は、ゆ○りんだけは天使だと信じてる。間違いない。

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