第47話 偽銀竜の咆哮
ギンリュウソウの根元から幾つもの極太の糸が地面を突き昇り、鞭のようにベルに襲い掛かる。
ギンリュウソウモドキが力の行使によって消費した分の生命力は
周囲の木々や地上や地中の生き物から菌糸を介して自動的に回復される。
強力な大技を際限もなく振るいつづけられる状況で、ベルは逃げるわけでもなく、
ひたすらギンリュウソウモドキの周囲で菌糸の大鞭によるなぎ倒しを躱しつつ攻撃を続け、
その距離はおおよそある一定のあたりをキープしていた。
しかし、再びその鱗の強度が再生しており、ベルの攻撃は通っていなかった。
ギンリュウソウモドキは新たに多くの菌を生成した訳ではない。あらかじめ撒いてあった菌糸があったが、
力の使用制限の為にその全てを余すことなく使えるかというとそうでもなかった。
MPが0になったら死ぬものがいてそいつが最大MP100だとして、毎回戦闘のたびにMP消費80の技は使わないだろう。
つまりはそういうことだ。
しかし今は違う。
MP100以上の技は使えない代わりにMPが∞状態になったみたいなものだ。
惜しげもなく菌糸を励起、結合させその大きさ質を最大限に引き出す。
巨人の剛腕のように、竜の尾のように振り回される菌糸の大鞭はベルに当たれば叩き潰せるだけの力を持っていた。
ベルは大鞭が生えている根元に接近しその大顎で根元付近を挟み、齧り、喰らう。
食され切り離されたことでギンリュウソウモドキの制御を離れた菌糸は逆にベルの経験値となる。
もし、このギンリュウソウモドキが自身の根と直接結合していない切り離された菌すらも制御可能な、
ギンリュウソウ系の更に上位の個体であれば、ベルは今頃冬虫夏草の如く内側から菌に寄生されていたかもしれないが、
ギンリュウソウモドキ程度ではそんな力はない。
大鞭の根元を喰らうベルを叩き潰さんと別の大鞭で薙ぎ払うが、ベルに躱されてしまい、
それは削られて根元が不安定になった大鞭に止めを刺してなぎ倒す結果にしかならなかった。
根元から寸断され地に落ちた大鞭はすぐに分解され大地に戻る。
そして大地の中を巡って再び切断されていた大鞭の下に集まり、大鞭はその長さをもとの長さまで戻す。
再びベルは同様に別の大鞭の根元を喰らい、それを止めようとする別の鞭との自滅を誘う。
そのようなことが幾度か続いた。
流石に大鞭を再生成するのは力の消費が大きいのか、
再生成中は周りの生き物からの養分奪取が追いつかないのか、
菌を散布した己のテリトリーにある生物の生命力の方が枯渇してきたのか、
それともその全てか、
徐々に大鞭の動きは鈍くなり、地面を打った際に大鞭から崩れる菌が増えたり、
切断されても再生してこない大鞭も増えており、当初7本あった大鞭が今では5本になっていた。
このままだとさらに減ることは予想に難くないだろう。
現在ギンリュウソウモドキはMP回復薬を使ってMP消費激多な技を使いまくっていたような状態である。
つまりMP回復薬が無くなって来ればもうそんな無茶はできないのである。
そんな事情なんてベルは知らないが相手が弱ってきていることは理解できた。
更に攻撃や妨害を続け大鞭の数が3本にまでなった時、
今こそが機会とばかりにベルは大顎を大きく開きギンリュウソウモドキに接近し、
何度も何度もその根元を挟み続けた。その度に鱗がどんどん罅割れていき、柔らかな中身が見えてくる。
ギンリュウソウモドキは体をうねらせ苦痛の咆哮をあげると、
周囲から生え、今まさにベルに襲い掛からんとしていた大鞭がその形を維持できなくなり地に落ちた。
もはや枯れ木の様なというより枯れ木になったギンリュウソウモドキの付け根に当てた大顎に、
ベルは徐々に力を加えていくと、遂に哀れなモドキは体を斬り落とされ轟音を立て地に倒れた。
そして、
付け根から吹き出す銀竜の血を啜りベルは覚醒の時を迎える。
ギンリュウソウ系上位
キンリュウソウ
テリトリーはかなり広くなった。
地中から極太の菌糸の鞭を大量発生させるパターンから、鞭同士をぶつけて空中で鞭を分解し、
発生させた菌糸の雨に当たったものを寄生状態にする特殊派生パターン(菌竜葬)がある。
ただ、何かしらの形で食事系のスキルやその他の要因等で、
無効化したり消化したりもできる上に、
寄生されきる前にキンリュウソウを殺せば端末も死ぬので必ずしも万能なわけではない。




