第6話 歪んだ愛情
この世界では割とダメな母親が多いです。
そもそも、本編の主人公が仔を産んだら爆睡して子供が死んだのにも気づいてない
超外道級のダメ母なので、それと比べれば歪んだ愛情くらいましな方ですね。
性別が再びメスに戻った和音もといデュカリスが最初に思ったことは、
お、女の子になっていますわっ!! いえっ正確には『戻って』なんですけれども。
あぁ、なんということでしょう。
この身体ではわたくしの×××ではーちゃんの×××を××××したりできませんわ。
………でも女の子同士というのも全然アリ、ですわね。
なんて極めて腐った内容であったが、次第に人であった頃の幾つかの記憶が失われていることに気付いた。
両親や友達の顔や名前が思い出せない。生前の風景が霞みがかったようにぼやける。
これが、あの夢のような空間で説明があった大切なものを失うということかと和音は気付いた。
以前と比べ、自身のポテンシャルは上がっているが、デュカリス姫の婚約者ではなくなり、生前の記憶も薄れてきた。
果たして次死んだときには何を失うのか。
その恐怖に耐えられなくなった和音もといデュカリスは思考を放棄し、現状を見る事にした。
今度の私のお母様は狂っておられますわ。
それがデュカリスが母であるメリッサに対する感想であった。
デュカリスは、蜂型モンスターベルセルクアーピスの女王メリッサの長女として再度この世界に生を受けた。
メリッサは母親としてはまだ未熟であった。母である前に彼女はまだ妹であった。
彼女は自分の娘を通して死んだと思っている姉を見ていたのだ。
自分を構い倒しているようで、その実全く自分を見ていない。そんな母親がデュカリスはあまり好きにはなれなかった。
メリッサの巣ではやたら鶏肉(未調理)が出た。あとハチミツだ。
その理由は、メリッサが鳥型のモンスターに対して狂気的な妄執を抱いているからだ。
鳥型モンスターを見つければ率先して殺しに行き、時には虱潰しに捜してまで鳥型モンスターを滅する。
デュカリスやその妹スセリに対しても死にかけて抵抗できない鳥に止めを刺すように命じて殺させることも多々ある。
流石に3女以下のかなり年の離れた妹たちはまだ戦闘には参加させられてないが、まぁ時間の問題であろう。
周囲に鳥の形をしたものがいなくなると、巣を只管南東に移動させてまでの掃討である。
成鳥だろうが雛鳥だろうが関係ない。ただ鳥の特徴を持ったものを皆殺しにするだけだ。
特に黒い鳥に対しては、暴走ともいえるほどの殺意をむき出しにするが、殺し終える度に、
「チガウ、コイツジャナイノ」
そう呟いているそうだ。
ただ、メリッサの姉であるほうのデュカリス姫はオス蜂であったデュカリス自体が救っている。
砂浜に落ちた後生き延びれたかどうかまではわからないが、きっと生きているものとデュカリスは思っていた。
ただ、それを母に教えるつもりは無い。不確定な情報であるし、転生に纏わる余計なことまで話さなくてはならない。
そもそも、それほど母が好きではなかったからだ。
厳密には嫌いではないが非常に苦手である。特に『デュカリス』と呼ぶ母の声は自分ではない誰かにあてられている気がするからだ。
ちなみに、ハチミツが多いのは完全な女王の嗜好だ。
メリッサは超甘党なのだ。
ベルセルクアーピス ランクA+のミツバチ型モンスター。
痛覚を遮断し、ダメージを受けた個所を変質させ戦闘を続行させる能力がある。
基本的にはかなりの上級モンスター。