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外伝 NO WALK NO GOAL

リーエスが目を覚ますとサンドクリーパーの姿は無かった。

目の前には付け根が少しだけ欠けた『シンフォニアワスプの翅』と自身の翅がある。

どうやら脅威はしのいだようだ。


しかし自身の飛行手段もまた失われてしまった。

これでは極東まで行けない。行くことができない。もはや不可能だ…。


いや、それでも行かなければならないのだ。

彼女はあるき続けた。砂漠を越え、湖を迂回し、立ちはだかる敵を滅し、

歩き続けた。雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けない。

後に、こういう蟻に私はなりたいランキング上位にランクインした彼女はあるき続けた。


しかし、物理的限界がある。そう、大陸と極東とを塞ぐ海だ。

ちょうど結婚適齢期になった彼女は最大の壁にぶつかってしまった。

彼女は海の中を行こうとした。何度も溺れそうになりながらも泳ぎつづけた。

其れなりに泳げるようになったが、到底極東までを行くには届かない距離であった。

それでも、遥か長い年月を泳ぎ続ければいつかは極東まで泳げるようになるかどうかはわからないが、

可能性がある以上試さないわけにはいかなかった。

もはや、彼女には雌の幸せとかそんなものは使命の前にはどうでもよくなっていた。


彼女が雌としてそんな悲壮な決意を固めて再び海に入ろうとしていた時だった。

「じ、自殺!? やめた方がいいって!! ほら、未亡虫でもそれだけ綺麗だったらまた別の虫生があるネ!! 」


なんかちょっと語尾が怪しい残念さが漂う美少女な羽アリがリーエスを必死に説得してきた。

(入水自殺はまだわかるとして未亡虫?……あー翅を落とした既婚の女王アリにでも見えたのか。)

蟻族の王族の中には婚姻後自ら翅を落とすものもいる。


その後、まず自分が未亡虫ではないこと、そもそも結婚もしてないこと。っていうよりいい雄がいたら紹介してほしいこと。

そんなことよりまずは使命が大事であることをその羽アリにリーエスは説明した。



すると羽アリはリーエスごと、極東まで運んでくれた。途中でリーエスを落っことしたりしてしまったが、リーエスは泳げたので何とかはなった。

そんなこんなで、無事スセリの所まで翅を届けに行ったのだが、

結局スセリは、



「よくここまで来たわね。でも、まだ翅が一対見つかっただけ。私はまだ諦めるつもりは無いわ。」


若輩の女王が心配するほど脆弱なメンタルをしていなかったのである。

これがメリッサやベルであったなら最後の糸がプッツン切れていたのはたぶん間違いない。

というかそのまえにぶっ壊れて暴走してる。というより実際にしてた。


そんなこんなで、この極東で優秀すぎる長兄がいるので、と、放浪の旅に出ていたあんまり特徴のパッとしない蟻族の次男坊と出会い、

3匹でいろいろ過ごしているうちに、鈍感な次男にアプローチをかける残念な子に

「リーエスさんって未亡虫なのかな?」

なんて照れながらデリカシーの欠片もないことを聞く次男の所で、蜂系統には非常に珍しいハーレムの一匹となり、

若いころの負担が一気に来たのか割と早死にするも子沢山で幸せそうにその生涯を終えた。

ちなみに娘たちには気が多い雄には気を付けるように強く言っていたそうである。

リーエス(伴侶からの愛称はリエ) 種族シーライドアント ♀

ウミトゲアリのモンスター。アメンボのように水面を動ける。

極東に来てからも水泳を続け、遂には『海』に適応した。

アリ界きってのアスリートで若々しかったが、もしかしたら休養をあまりとらない性格が寿命を縮めたのかもしれない。

結婚願望が強いながらもその方面には鈍感で、翅が無いため一見未亡虫に見えることもあってか、

出会いから結婚までは非常に長かった。特徴の薄いエロゲー主人公的な旦那のハーレムに残念美少女とともに入っている。

蟻族の中では有名な逸話を幾つも持ってはいるものの、自分がやったからって、働きアリに自分の実家まで言付けを頼んだり、

自分が一夫多妻に入っておきながら、娘には一夫一妻を推奨して呆れられたりなど負けず劣らず残念な話は後世には残っていない。

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