第5話 再転生
彼女が彼で彼が彼女で
スキル『三部作の(トリロジー)魂』が発動しました。
残魂数2。汚染領域を介して再転生が実行されます。
『三部作の(トリロジー)魂』
全部で3回分の命のストックがある。
輪廻を繰り返すたび、より、自身の力を発揮でき生き延びやすい形へと変わっていく。
――――但し、その強化は大切なものと引き換えに。
何も内容でよくわからないものに満たされた極彩色の夢のような空間で世界で、オス蜂は靄のような姿で存在していた。
周囲の空間の幾分かが歪み始めると、その場所には言い知れぬ存在感を持った何者達かが存在していた。
その姿はオス蜂と同じく風に舞う霧のように歪む姿で捕えることはできないが、確かにそこに存在していた。
<我らはこの汚■領域の管理者。>
そう頭に直接響くような声で答えたものは焦げ茶色の靄であった。
<珍しい。実に珍しい。バグ■のものでありながら■廻に留まることなく再び生を迎えんとするか
…『三部劇の魂』……まさかあの方が…、いやそんなはずは……あの方は……>
オス蜂の前世たる和音の頭脳を持っても理解に苦しむ内容を喋る。
よくわからないが、和音はとりあえずぼんやりとした意識のまま聞き取ることにした。
<何を言ってるのですか?>
<いっ、いや、全くヴェ■パの所は当たり揃いだな、と。>
<当然でしょう。>
焦げ茶色の靄に対し、さも当たり前と答えた別の靄の声に和音は聞き覚えがあった。
間違っていなければ蜂であった頃の亡くなった最高権力者。
己が婚約者の母の声に酷似していた。
<あぁ、後娘の事は引き続き頼む。…………でも母的には同性愛は無しだと思う。うん。切実に。>
同性愛?いえ?わたくしオス蜂ですが何か?
女王陛下らしき靄がよくわからないことを言ったのを最後に夢の中で夢を見るように再び和音は意識を失った。
目を覚ますと、彼は彼女だった。いや、正確には彼女だった彼は彼女になっていた。ややこしや~ややこしや~。
彼女が目を覚ましたのは、メリッサという蜂型モンスターの女王が治める巣であった。
巣の女王メリッサは自身を庇って散っていった姉の名を彼女に付けた。
そう、彼女の名前はデュカリス。母を庇って散っていった姉と同じ名であり、
オス蜂自身が文字通り命がけで救った姉の名である。
「初めまして。私の可愛いデュカリス。貴女は私のお姉様のように強く気高く美しくなるのですよ。」
あーやっとオネエから普通の女に離脱。