第四話 第一部閉幕
オスの意地。
姉フォミカの己が身を犠牲にした判断で逃げ延びたデュカリス姫、メリッサ姫姉妹達であったが死は翼を得てその背に近づきつつあった。
三毒が貪の保有者サンコウチョウが魔王スペルヴィアの系譜を断たんと追ってきたのだ。
当初気づいたメリッサは己と姉を運ぶオス蜂に急ぐようパニックになっていたが、
姉たるデュカリスは達観したようにここが自身の潮時かと見定めた。
オス蜂が主たるデュカリス姫は決断した。姉が自分達を救ってくれた。次は己の番であると。
オス蜂が主たるデュカリス姫は託した。末姫にヴェスパの系譜を、栄光を、勝利を紡いで欲しいと。
オス蜂が主たるデュカリス姫は命じた。妹を生き残らせんが為己と共にここで死ね、と。
光栄の極みとばかりにオス蜂は命じられた通り凶鳥に対し向き直った。三毒が未完成なものでなければ、
一切の抵抗も意味なく、主従もろとも屠られていたに違いない。
しかし、三毒のうち最も早く創られた『貪』は完成度はそう高くなかった。そもそも、その真価は文字通り貪ることによって発揮される。
力を手に入れてからはまだ何も食べていない鳥は、ただの強力かつ巨大な鳥型モンスターである。
そもそも、『七つの大罪』保持者であるためには、それ相応の器が求められる。
『三毒』が如何に使いやすく作られたとはいえ、元が強力なモンスターで無かった鳥にはまだ持て余しているということもあった。
だからだろう、オス蜂は自分の身を囮にしてカウンター気味にサンコウチョウの首の付け根を刺しぬいた。
それでも殺すには至らなかったが、凶鳥を立ち退かせることには成功した。
彼は、無事主君であり、婚約者である姫を守り通したのだ。
――――――――守り通したのだが、………それが彼の限界だった。
下が浜辺であることを確認するとそこにデュカリス姫を落とし、そこでオス蜂の意識は完全に途絶えた。
開始4話で死亡