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第29話 討たねばならぬ『仇』

ミダスの心音を中心にそれが響くミダスの身体と周りの大気との境界を見極める。

それによってベルはミダスの動きをとらえているのだ。

音の翅で舞い、音の眼で相手を補足する。何たる神業、何たる魔業。



「ご安心を、すぐその耳障りな音はわたくしの世界から消し去ってあげますわ。」


ベルが昏く嗤いその弓の様な脚でミダスを踏みつける。

と同時にミダスの世界から完全に音が消えた。

そう、以前の再現だ。むしろ以前よりもたちが悪い。結界の中にいるのはミダスだけなのだ。

ミダスの周りに創られた外部からの音を吸収し内部の音のみを無限に増幅、反射し続ける結界。

その中にミダスには聞こえない域の超高音が他の脆弱な音を駆逐し暴食し、急速に膨れ上がる。


瞬間、世界が絶響した。




ミダスの身体は塵になり風に舞っていく。


「……随分と遅くなりましたわ。パーティーの準備にしては『遅すぎ』でしたわね。」




バサッバサッバサッ


そう笑うベルの上空から不穏な羽音が響き渡る。ベルは音の眼でその姿を探る。

「新しいお客様?………いえ、お会いするのは2度目ですね。

この身体では少々きついですが関係ありませんわね。

――――――――――――――母の仇、ここで滅びなさいっ!!!!」



そのころ 極東の巣では

「アレぇ?お姉遅くない?妹たちちょっと私様子見てくる。

…………あれ?あれあれあれれ~おかしいな。こここんなに花が咲いてたかな。周りの雰囲気もなんか違うし。

……もしかしてお姉?いやこんな時間じゃ無理ね。何があったの!?説明プリーズ。

……お姉―――っ何処いるのーっ!?もう準備いいからパーティー始めるよーっ。」

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