第16話 メリッサのレクイエムあるいはベルのプレリュード
別れの時
今迄の自分の全てが無駄であったような全てが報われたような、そんな母の頭越しにデュカリスは見た。
先程自爆したかのように見えたサンコウチョウが無傷で黒焦げになった蜂達を次々と貪り食っているのを。
デュカリスは恐怖に襲われた。勝てない。このままでは自分たちも殺される。
そんな娘の姿を見たのか
「御逃げなさい。…もう、もういいのです。今まで私が為そうとしてきたことの全てに意味など無かった。
でも、為してきたことには意味があったの。今迄にあの雄蜂との間に貴女達を授かった。
それが唯一私が私のお母様に顔向けできること。…そうね、ごめんなさい。いままで私の姉の代わりにしていて。」
「……散々、散々今迄わたくしの事を見てこなかったくせに、死ぬ間際になって今更、今更ご勝手すぎますわっ。」
「そうね、謝っても赦してはもらえないわよね。…だからせめて受け取って頂戴。
私の姉の代わりではなく、娘の貴女の為の名前を。
『ベル』。美しい鈴のような声だから『ベル』。それが今日からの貴女の名前よ。」
母に強がってはいたがもう限界であった。
「赦しますっ。赦しますからっ」
――――死なないで、そう言おうとしたときに既にメリッサはこと切れていた。
世界は不公平だ自分には3つも魂があるのに母にはもうやり直すことはできない。
ならば誓おうではないか
「お母様から頂いたこの名に誓います。必ず仇を御打ちいたしますわ。」
これが、後の魔王『天上の音色』ベル・アルモニカの始まりである。
1つの願いが終わり新たなる誓いが生まれる。
それは受け継がれた想い(ふくしゅう)。
ベルと発音する単語
bell 鈴、鐘
belle 美しい
baalu 主、又は固有名詞
そっちに詳しい人ならすぐわかるネタ。