第15話 絶望あるいは希望
真実よりも信じたいこと
「よくもやってくれたわね。もう少しで悲願を達成できていたというのに。」
「えっあ、あ」
「全く余計なことをしてくれたものね、貴女も、……あの雄蜂も」
「……」
「全く亡くした家族の復讐を今の家族に邪魔されるなんてほんとに茶番だわ。
私ももう戦えそうにないどころかもって少しね。
――――――――――かくなる上はデュカリス、貴女が奴を
……………無理ね。…それに無意味だわ。私の為の復讐なのに私が死んだあとじゃ何の意味もないもの。」
そういう母の顔は全てをあきらめたような清々しさと絶望が混在していた。
そんな空虚な顔尾をした母親を初めて見たせいか、自分のせいで母が悲願を達成できなかった後ろめたさか、
――――つい、言ってしまった。
「詳しいことをお話しする時間はないでしょうから説明は省かせていただきますわね。
―――――私はお母様のお姉様には成れませんわ。」
「―――ッッ、それをどこから…、そう、あの雄蜂ね」
「いいえ、違いますわお母様。どなたからでもありません。
先ほども言わせていただいたように時間がございませんから結論だけお話しさせていただきます。
――――――お母様のお姉様デュカリス姫はまだ死なれてはございませんわ。」
「……冗談だとすぐわかる冗談は気休めにもならないわ。」
「証拠はございませんわ。ですが確かにかつてあの鳥に襲われたデュカリス姫は助かったのです。」
それを一笑するのは簡単だった。だが娘は強くそれを確信しているのがメリッサにはわかった。
というよりも弱り切った彼女の心は信憑性よりも僅かな希望を優先し、
真実がどうかということより信じたいことを信じただけと言えないこともない。
「そう、……そうなの…。………よかった。本当によかった、アリスお姉様…。」
遅すぎた救い