外伝 天の音 その5
嘗て、勇者と魔王が争った空で、
その意思を継ぐものと血を継ぐものが共闘を果たす。
それは余りにも出来過ぎた奇跡のような話だった。
陸上では扶桑帝国の陸上部隊が国が避難するように指示したにも拘らず、
勝手に残った足手まといや、病気などで残らざるを得なかったもの、
報道の自由だとかで敢えて入ってきたもの達を回収しながら戦闘を繰り広げていた。
突如、CMCH達『だけ』が苦しみだした。
「何をしたっ!?」
「モスキート音、だったかしら?特定の波長を聞けるものにだけ聞こえる音。
奴らとその他のヒトの様子を見ながら、
奴らにだけ聞こえてそれ以外のものには聞こえない音を最大音量で流してみただけ。
難しい話ではないわ。」
何が難しい話ではない、だ。
つくづく魔王に連なる者達は人知を軽々超えてくる。
勇達には怖気がするほど難しい話だった。
しかしCMCH達も直ぐに対処行動を取った。自らの糞を耳に詰めたのだ。
だが、そんな隙だらけの状況を見逃す程扶桑帝国陸上部隊の軍人は訓練をかまけてはいない。
自らの新たな身体の性能を過信したのと強姦の為に防弾チョッキを脱いでいたCMCHは
徹甲弾をその身に受け沈黙していった。
しかし、エラインダーの主戦力は航空部隊であった。
効率が悪い分を物量と出力で押し切った実弾やレーザーをこれでもかと言うほどに、
勇と扶桑帝国の航空機、そしてアマネに被せてくる。
更に輸送機から一斉に飛び立ってきた何百、何千のCMCH達が迫ってきては、
空中で個人用の火器や自らの身体で攻撃を仕掛けてくる。
一機の輸送機は中の人員が離脱する前に墜落して海に墜ちて行った。
海に落ちた輸送機からは機長以外のものは逃げ切ることができなかったようだった。
機長は逃げようとしたが降りてきた他のCMCH達に殺された。
余りにお粗末な軍人が多いエラインダーの民達であったが、
その数はどんどん増えてくる。追加輸送機のせいだ。
扶桑帝国は国民を見捨てて都市を放棄するという戦略を取れないために、
空も飛べる歩兵で人質を取りながら都市を制圧していくという作戦をウリニダは立てたのだ。
遂に追加兵達により何万と言う数に膨れ上がった。
これはCMCH達がパイロットになりたくないと言った事も原因である。
そもそも自国の航空機に信用を置けないのと、
空の上に航空機でいたのでは強姦できる女たちがいないからだ。
当初は互いに警戒しながら勇とアマネはCMCH達との戦いを強いられた。
その為か何度も危険な目にあっていた。
アマネの音属性広域制圧攻撃ビブラートアトモスフィアにより、死亡したり、
生きてはいるものの飛行用補助器具を失って緩やかに落ちていくCMCH達。
落ちていく飛行能力を大幅に失ったCMCH達は超高速電子加速物理弾兼光学単装砲アマノハバヤ改の餌食となっていく。
ふと上を眺めるとアマネの後方から迫るCMCHを勇は見つけアマノハバヤ改をそちらに向け撃った。
勇を警戒していたアマネであったがそれ故に僅かに銃線上に自分がいないことに気が付いた。
銃口の先を見つめるとそこには撃ち抜かれたCMCHがいた。
「助けてとは、いってないわよ?」
「そうかもな。」
「―――ありがと……。」
「えっなんだって?」
「何でもないわ。」
「……どういたしまして。」
「……聞こえていたのね、性格の悪い。」
そう軽口をたたき合えるようになってきた勇とアマネは互いを警戒から外し、全力でCMCHに向かうことにした。
何度も互いの背を見せ、何度もすれ違いはするものの、その時にアマネは不安など感じていなかった。
話を聞いてもらうことができるのならわかり合うことはできる。
アマネは他の蜂達に気兼ねすることなくコノハ達と話せる、それだけじゃなく他の蜂達とも友達に、
蜂だけじゃない、昆虫全て、もしかしたらそれすらも越えて、そんな妄想すら浮かべてしまえるほどだった。
なんどか、エラインダーの兵器がアマネの察知能力をかいくぐってアマネに打ち付けることもあったが、
勇の割り込みにより体勢を崩したところへの追撃を必要以上に受けるまでにはならなかった。
戦いは最終局面へ、超級衝撃波や音刃でちりじりになって敗走し始めた敵を掃討していく勇とアマネだった。




