親娘と姉妹 4
女王蜂はよろめき大きくふらついた。
だがそれだけだった。
「有象無象の虫如きが。最強種たる蜂族に逆らおうなどとはね。
気概こそ称賛してあげますが、生かしては於きません。
どう殺してあげましょうか?…………仲間同士で喰らいあう未来なんていかが?」
くっ、確かにダメージは通ったようですが、殺すまでには至らないとは……。
これが女王。これが蜂族。これが………傲慢にして誇り高き昆虫種最強種族。
お母様。私は覚えています。かつてたくさんの怪鳥が飛んできたことがとても怖かったことを。
強がっていても脅えていた私に気が付かないふりをしてくれたお母様を。
でも、私だって魔王たるお母様の娘。
流石に蜂族のように、とはいかないかもしれませんが誇り高く散っていきましょう。
「届かなかったようね。……………スズネ、ヒビキネ。
最期まで付き合って下さいね。」
「…最初からそのつもりです。アマ姉様。」
「はいっ。」
「………蜂族にも稀にいる無能どもにも見習わせたいわね。
だけど、私にも譲れないものがある。――――――――――――――有象無象の紛い物よ、消えなさい。」
女王蜂が何かをしようとしたときでした。
大気が、いえ、世界が揺れたのです。
「わたくしの仔達の何処が有象無象なのか、学の足りないわたくしにもぜひ教えていただきたいですわね。」
お母様…。
いえ、私たちの知る最強存在。『暴食』の魔王。ベル・アルモニカ。
今までに見たこともない程『力』が循環しているのを感じる。
圧倒的な『音』の力。世界を音で知り、
世界を音で支配する音の世界の覇者。
それが、魔王、ベル・アルモニカ。そして私たちの大好きなお母様。
「……そんな…そんな、まさか…?」
お母様を前にして驚愕する女王蜂。
お母様が1本だけ翅を女王蜂に向けます。
その翅の羽ばたき一つで女王蜂は森に弾き飛ばされていきました。
……それだけで、なぜかトドメまではさしに行きませんでした。
4匹で巣に帰ってきた時、お母様は言いました。
「貴女達にまだ遠出は早かったようね。1匹立ちはずっと先の話になりそうね。」
「「「はいっ。」」」
そして私たちはそれに元気よく、そして品良く答えました。
追伸。
なぜかその日からあの女王蜂がお母様のストーカーになりました。
森に近づいたときにいつの間にか寄ってきます。
………住処だけは知られないようにしないと…。




