第11話 報復のOVERTUREあるいはいつだって勇者パーティーは数の暴力
●すこんばっと
翌日、蛹と幼虫である姫たちを除く総出でサンコウチョウの捜索が始まった。
おおよその地域は掴んでいるのであとは囲い込み特定するだけだ。
幾つかの森を探した後入った森には今までの森と比べあまりにも生気が感じられない。
時折木は焼け焦げ、生き物の鳴き声もしない。
「お母様」
「えぇBINGOね。十中八九ここに『奴』がいるわ」
十中十でないなら、ビンゴじゃなくてリーチではないのでしょうか、お母様?
デュカリスはそう思ったが、あえて口には出さなかった。
嫌になるほど快晴の空の下一瞬森の奥の方に空からさらに強い光が降り注いだ。
それを『奴』だと断定したメリッサは全軍に命じた。
「全軍突撃」
何故全蜂達が飛び跳ねているのかはわからないし、
それぞれの頭上一瞬見えた気がする『P↑』の文字が何なのか知ろうとも思わないが、
なんとなく士気が上がっているのは間違いないのでその理由を考えることをデュカリスは放棄した。
先程光っていた場所に向かうとそこには辺り一帯の焼き尽くされた木々と焦げた何かをついばむ『奴』の姿があった。
「ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ―――――見イツケタワァ。奴を…
やぁつをこぉろしなさぁぁいぃぃぃっ!!!!」
それからのメリッサの戦闘はまさに狂戦士の名にふさわしい戦いぶりであった。
兵隊蜂を使って揺動をかけたところを刺し、サンコウチョウの啄みを躱して後ろから裂き、
兵隊蜂を盾にし攻撃をかわし、その兵隊蜂に毒を充満させて口の中に放り込み、
兵隊蜂達に周りから押さえつけさせて兵隊蜂ごと刺し抜き、
暴れるサンコウチョウの攻撃で身が削られようと気にせず、ただ刺し抜き続けた。
しかし生きている相手との初めての本格的な戦闘と中デュカリスは
母のあまりの殺気と狂気と殺されまい逆に貪り殺してやろうというかつての自分に止めを刺した巨大な鳥に何もできずただ立ち尽くすことしかできなかった。
その巨体を横たわらせ力なく倒れこむサンコウチョウ。蜂たちは誰もが自分たちの勝利を疑っていなかった。
しかし、三光願う凶鳥は哭く
「ツキィ」
それは月への嘆願。青空に偽りの空月が顕現する。
星規模の視点で見ると実は復讐ではなく逆恨み。