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最終章 中盤 『せい』なる光

ヤタガラスにとってはベルがどのような思惑でここに来たのかは関係ない。

ただ旨そうな奴が来た。其れだけであった。


違う言語で同じ結論を互いの本質が告げる




『いただきます』、と。


「ヒィィッ」

ヤタガラスの日を呼ぶ懇願に偽りの太陽が空に顕現する。

当たればベルに深刻な損傷を与えることが容易に想定できる大技が序盤から振るわれる。

それだけヤタガラスも目の前の敵を大物だと認識しているのだ。


ベルはその偽りの太陽に感じたものは恐怖でも焦燥でもなく、憎しみ。

彼女の『ベル』の部分が長き時を得てなお色褪せない憎悪となり現れる。

現れたのは憎悪だけではない。歓喜もだ。あの日の誓いがようやく果たせる。

母から貰った名に誓った。必ず仇を打つという祈りの様な誓い。

かつては成就できなかったが此度こそは叶える。叶えてみせる。

もはや彼女のそれは祈りではなく確信だ。


母だけではない。

ベルの妹を封印しているのもヤタガラスだ。

誰に教えてもらわなくともヤタガラスの封印の奥底に誰がいるかなんて誰よりも感じている。

『アルモニカ』の名をくれた彼女の妹を救うためにもその封印の憑代が邪魔である。


母と妹から受けた名『ベル・アルモニカ』そのものが、彼女がヤタガラスを倒す理由なのだ。



だが、ベルは大罪の魔王クラスの中では耐久力は低めだ。

無論、それを補い余りある特殊さと回避性能があるが、最強クラスの中では低めなのである。

比べる対象がデュカリス=スペルヴィアなどが存在する大罪の魔王なのは悪すぎるだろうが、

相手のヤタガラスもまた最強クラスなのだ。その攻撃は当たれば只で済むはずがない。






「まぁ当たれば、のお話ですけれどもね?」


偽りの太陽が破裂し超高熱の爆風をまき散らすが、それをそれ以上の暴風で押し返す。

光や熱に対し強烈な耐性を持つヤタガラスには一切影響はないが、

ベルのこの行動は攻撃ではなくただの『防御』手段に過ぎない。

ベルはすぐさま、『攻撃』に移る。


『音』を纏った翅による強力な斬撃。

ベル自身の速度も相まってこの攻撃を喰らえばヤタガラスもまた無事では済まないだろう。

ベルにとっては音属性の基本近接攻撃であってもベルの域まで行くと凶悪極まりない必殺技へと変わる。

音を止めようと思ったら音が伝わらない状況を作るか逆に音をぶつけるしかない。

そんな回避も防御も困難である攻撃を、ヤタガラスはその羽で受け止めた。




―――自身の中に眠るものの『音』の力を使って。


ベルも止められた瞬間にその力の出所を悟る。

ベルは静かに哂う表情を崩さぬままその身の内の怒りを更に燃え上がらせる。


暴風でかき消される爆風と、音にかき消される音。

互いのその攻撃に対する対抗手段が相手にあることを悟った2匹は攻撃を別のものに切り替える。



「ホシボシィィッッッ」

それは星々に対する魂願。昼空の天に輝く見えぬ星々の煌きが収束し降り注ぐ。


ベルはそれに対し『音』の限界を『暴食』することで対抗する。





音とは物体の振動たる波。縛りを越えたベルは形無き光の波すらも音として伝えあげる。

降り注ぐ光の奔流に作用し押し返す。

「ホシボシィィッッッ」

ヤタガラスは更に魂願を重ねその光を強化するが、ベルもまたその『声量』を跳ね上げる。

拮抗した光は弾き消え、その余波で役者の許容を越えた(ステージ)は崩壊する。


ヤタガラスは押し負ければ逆に星光を利用されるが、

それでも光と熱に極めて高い耐性のあるヤタガラスには痛手とはならない。

だからもう一度星光の収束を撃ち放つが再び相殺され光が世界を埋め尽くす。

目も開けていられない状況だが、そもそもベルには開ける目自体が無い。


その光に紛れて再び『歌』を込めた翅でヤタガラスに襲い掛かる。

少し反応は遅れたが何とか間に合ったヤタガラスと何合も翅と羽を打ち合う。

ヤタガラスに致命的な損傷は当てられそうになかったが、それでもいい。ベルの目的は『そこ』にはない。

ヤタガラスの首や心臓などの致命部位ではなく羽の付け根。正確にはそこにある『封印』。


そこに『歌』を込めた翅を何度も叩き込む。

『音』を打ち消しているヤタガラスであったが、

外側から打ち込まれる強力な魔王の斬撃と、

外側から叩き込まれる呼びかけるような歌に呼応する内側からの『音』に封印は容易に崩壊する。


ヤタガラスの体から消えた印の代わりに、場に三匹目の最上位が顕現する。

「気持ちがいい目覚ましでばっちり目が覚めたわ。ほんと気持ちがいい天気ね。

―――――――――――――思わず歌いたくなるぐらいに。」

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