勇者と魔王 墜ちる勇者
今までとはまるで違う、先ほどまで魔王と思っていた存在が道化程度に思えてしまう迫力に透流は一瞬竦む。
「音が伝わりにくいフィールドで勝負する。確かにいい考えですわ?
でも、科学的に想定される範囲内を超える。それが『ヒトである者』と『人でなくなったモノ』の差です。」
ベルは音という攻撃力に難がある属性の限界を『暴食』する。
概念として『音』の属性を持った音の限界を超えた『音』。
それが『暴食のベル・アルモニカ』の力。
音を伝える空気の薄い世界に轟音が響き渡る。
もはや魔王の音は物理法則に作用されない。
思えばその片鱗はコズミックホラーモスとの最終決戦の際にも表れていた。
勿論それは共鳴するもう一体の魔王あってのことだが。
竦んだ己をごまかすように透流は魔王に斬りかかる。
しかし、
「止まりなさい。」
その一言で動きを封じられてしまう。
意識と機械との距離を近付け妨害させようとするが、これ以上はマズイ。
これ以上は何かに飲み込まれて人の領域を超えることになる。
―――――――だから動けない。
動けなくなった透流の耳元までやってきた魔王は語る。
「届かない。届かないのですわ。」
「何がだ…。」
「届かない。貴方では決して届かない。人でいたいと踏みとどまる貴方では人を捨てたわたくしには決して敵わない。」
「何を言っている…?」
「もっとその刃の、その翅の言葉に耳を傾けてくださいませんか?」
「な、に…を?」
「きっと『わたくし』もこういっていますの。」
魔王と勇者の剣が共に告げる。
「「あの化け物を殺す力をあげますわ。」」
さあ、わたくしの飢えを満たしてください。




