勇者と魔王 神器を遣う者
「あら、また、お迎えでしょうか?ありがとうございます。先程の方はやってきたはいいものの、勝手に自爆していきましたから。」
「っ、……人語を解するか。知っていたが直接聞くと正直驚く。
喋る魔王だなんてまるで伝説の『まつろわざるもの』のようだ。
まさか貴様『まつろわざるもの』の眷属か?だから助けに来たと……。」
「わたくしが妹の眷属?笑わせてくれますね。わたくしの方が姉ですわ。」
「なん…だと……。この国の最強種の上…?………いやまぁいい、ひとまずそれは置いておこう。それよりも一つ聞こう。――なぜここに来た。」
「そうですね。――――貴方が出てきたことでどうやらわたくしの目的の一部分は達成できそうですわ。あくまでそれはほんの一部ですが。」
「……何っ?どういうことだ。」
「その一部とは『勇者』と闘いたい、ということ。こういえばご理解いただけますか?」
「―――この俺が『勇者』だと!?」
「えぇ、星の与えし力の代行者、人々の最後の希望の燈火。」
「俺がこの国最後の希望?笑わせるなよ、たとえ俺がここで倒れたとしても人はまだ終わりじゃない。
人はそんなに弱くはないっっ!!」
「もう負けた後の事を考えてるのですか?案外自信が無いのですね。ハンデをあげましょうか。
なんだったらこの戦闘間再生を止めてあげてもよろしいですわ。これで勝率が1%くらいにはなりましたか?
それとわたくしが言ってることが本当だと信じてもらえないようなのでここで証明してさせていただきますね。」
その高度を維持したまま羽ばたくのを止め、
その翅を先程透流が出撃してきた基地に向ける魔王ベル・アルモニカに透流の背に悪寒が走る。
「何をする気だ。」
「何って証明ですわ?」
翅の周囲の空気が歪む
「やっやめろぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!」
振り向いた彼の視界の中で先程までたしかにそこにあった基地が砂のように崩壊した。
透流の脳裏に先程まで共にいた後を任せた部下たちの姿がよみがえる。
彼らは確かに生きていた。そう先程までは、だ。ある意味自分が魔王を焚きつけたが為に彼らの多くはその命を…
「貴様、貴様、絶対に許さんぞぉっ!!」
透流の怒りの呼応するようにケーブルが蠢き興奮物質等の薬品が投与され、神器が輝き周囲の風がうねり始める。
その状況を見て、魔王は逆に喜んでいた。
「強き怒りが勇者の覚醒を促し真の力を引き出す。聞いていた通りですわ。」
普段の冷酷ともいわれる仮面を放り投げ激昂する勇者に対し、魔王はいつも通り余裕で優雅だった。
「それよりもその武器、本当に『面白い』ですわね?何処で手に入れたんですの?」
そんな魔王の質問を無視するように透流は魔王に斬りかかった。
高速振動で遍く対象を切断する『アマノハバキリ』を同じくベルはその翅で弾き返す。
「懐かしいですわ、『ソレ』。」
何度も弾き返されるが更に『アマノハゴロモ』で脳内クロックを加速させ、機械と人体の連絡速度を早くする。
透流と機械の距離が近くなるにつれて機械側が透流の意識を支配しようとしてくるがそれを精神力で抑え込む。
刃と翅がぶつかるたびに透流は大きく弾き飛ばされるがそのたびに弾き飛ばされる以上の速度で舞い戻った。
打ち合いの速度を跳ね上げ魔王の身体にも数度の斬撃を入れる。
距離を取った際には『アマノハバヤ』で射撃するが電子加速砲の発射前の収束音に反応した魔王に躱される。
だから遠距離武器でありながら距離が空くほど攻撃が難しくなる。
だが魔王が回避行動を始めるのは射撃とほぼ同時、躱せるギリギリのラインで敢えて遊んでいるのだ。
ならばその油断を利用する。
更に速度を跳ね上げれば魔王でも躱せなくなるのではないかと考えた。
透流は魔王に斬りかかりに行き、
敢えて受け止められ弾き飛ばされる向きを上に誘導し魔王の上空から銃口を下に向け急降下する。
「これなら躱せないだろっ!!」
上方からの航空速度と重力とを加点速度とした超々高速の弾丸。
速度という圧倒的なエネルギーをもった弾丸が魔王に直撃する。
その衝撃は凄まじく強固な魔王の強力なクチクラ質の皮膚を削り取るほどであった。
「くっっ…。」
敵が硬直した今がチャンスだと更に透流は薬物を投与して畳み掛ける。
アマノハゴロモの空調システムとアマノハバキリの高速振動刃を利用して空気の刃を生成して放つ。
アマノハバキリによる断裂の衝撃。隙こそ大きいが当たれば通常のモンスターなら切断可能な必殺技。
故に『衝撃』の蒼。
最早空中で停止し動かなくなった魔王は先程から呻き声を上げるだけだ。
動かなくなった魔王に容赦なく透流は衝撃を叩きこみ続ける。




