第一話 開幕からいきなりアウトロ
なお、作中でやたら音楽用語を知ったかで使っていますが、作者は音楽はわかりません。
彼が己が転生者だと気付いたのは、死ぬ手前であった。
彼は今生では生態系ピラミッドの上位に存在する、ヴェスパというスズメバチ型モンスターであった。
前世においても雀蜂のチートっぷりは大概であった。そもそも自分よりはるかに巨大な人間を殺しうる程過剰な毒があるし、
社会を作り団体行動をおこなう数の強みもある。だが最も恐ろしいのは超高次元の身体能力のスペック。
狂暴なアフリカナイズドミツバチ30万匹を10匹死者無しで滅殺してしまえる程の廃スペックなステータス。
その圧倒的最強さは某Y●UTUBEで見てもらってもわかるし、
巷で有名な永遠の●の作者の風の中のマ●●など読んだ人ならその圧倒的チートに理解していただけるであろう。
ゲームの世界だと虫系統がかなり弱かったりするが、実際にはスケールサイズとしての戦闘能力は非常に高い。
某マンガでは青い白竜が生成したバリアを下からスズメバチが刺し抜いたシーンは虫好きを歓喜させた。
ちなみにこの世界でも大概にチート種族である。
具体的には種族地総合550位はあるのではないだろうか?
何を言ってるのかわからない人はわからない方が幸せであろう。
無理に調べて果てしない廃人坂を昇り始めるのは長く険しい道なのだから。
話は変わるが彼は非常に幸運であったと言える。世界にはさまざまな生き物がいる。
走るもの、泳ぐもの、飛んでるもの、燃えてるもの、朝昼晩寝てるものなど。そしてより重要な部分では、
強いもの、弱いもの。喰うもの、喰われるもの。その中でも、彼は幸運な部類であった。
なぜなら、彼の生活圏において、彼の種族は圧倒的に上位のヒエラルキーに位置するからだ。
つまり、命を奪われることに恐怖する必要が無い。これはこの弱肉強食を是とするこの世界において
圧倒的アドバンテージであった。
ヴェスパは女王を中心とした女系格差社会ではあったため多少肩身の狭い思いをする羽目にはなるが、命の心配はしなくてもよかった。
改めて言おう。彼は幸運であった。
しかし今、彼はその命の燈火は消えんとしている。
だが、彼はその死に未練はないであろう。彼はその前世では不遇な生涯を送ってはいなかったし、
今生でも、前世でやり残したことをやはり達成こそできなかったものの、自分の成果には十分に満足しているからだ。
彼はヴェスパの中でも上位にあるスペルヴィアという女王の巣で生まれた。当初前世の記憶はなく、やや優秀な程度のオス蜂として産まれた。
幼虫の頃より、周りのおおよそのオス蜂よりも優秀であったことは自覚はあった。しかしヴェスパは総じてメスの方が強く、
オスとメスを比べれば少し優秀な程度のオスも大した性能ではない。それでも、他の生物からすれば恐怖そのものではあるが…。
ヴェスパは基本、女王様まんせー、姫さまぷりちーな生き物なのだ。
ただ、その優秀さを買われ姫の婚約者候補の一匹にはなれた。これが、彼の2つ目の幸運である。
悪い言い方をすれば、ただの種馬なのだが、彼はそれでもよかった。カワイイ姫と×××できるからだ。
スペルヴィア自体が美しかったので娘たちも当然美しかったが、彼が婚約者候補になった姫は別格であった。
初めて会った時にはまだ姫は幼虫であったが、それでもその美しさにはキュンキュンして鼻血が出そうだったくらいだ。
まぁ、構造上鼻血は出ないんだけれども。
また、彼はその姫になぜか懐かしさも感じていた。
その姫は、美しさだけでなく多くの事において優秀であり、百年に一度、否千年に一度、むしろ天文学的な確率でさえも自然発生しえない、
何かの意思によって生み出されたような存在であった。
それも当然であろう、姫、またの名をデュカリスは多くの未来において最強の魔王となることが確立される存在であったのだから。
まぁ、そんなことはこの彼には何の関係もなくて、とにかくこの美少女にべたぼれであった。
無論悟られないように常に無口にクールに誤魔化していたが。
そんなこんなで、彼の虫生は順風満帆であった。
――――――――つい先程前までは。
本編の第一幕の別視点。