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だってあいつが

作者: 川崎真人
掲載日:2010/09/06

 頭の弱い人間にはありがちなのかもしれないけれど。

 とんでもない醜態さらして「あ。これは終わった」とか思う瞬間ね。

 あーゆーの。あれが原因。

 基本的にあたしはバカだし、優柔不断で、右足から歩くのか左足から歩くのかで毎朝十分くらいは迷うんだよね。本当だよ。

 そんな人から見たら、変な奴どころか人間じゃないみたいに思われかねない、あたし弱小な女子なのだけれど。思うのよ。いじめって、される側に原因あるんでない?


 ふうん。

 いじめられっ子が言っちゃう? ここにそんなの書いて何の慰みになるの?

 おもしろそうではるけれどさ。


 もちろん悪いのはいじめっ子だよ。学校の先生はいじめっ子を糾弾すべきだし、いじめっ子は反省すべきだし。泥棒しといて、そこに金があるから取ったのだ、じゃすまないよね。けどお金がなきゃ泥棒は起こらないし、お金と違っていじめられっ子は別に必要じゃないし。

 そうだよ。あれだよ。お金と泥棒が揃うから窃盗犯罪が起こるって理屈よ。

 狩猟本能だの何だの引き合いに出すまでもなく、人間が他の人間に攻撃したいって思うのは別に変なことじゃないし。

 とーもーかーく!

 色々書いてみたけれど。あたしが教えて欲しいのは、いじめっ子に復讐する方法よね。

 具体的に何されるかってーと。そりゃ。殴る蹴るでしょ、爪だの顔だの、火、つけられるでしょ。

 まーそんなのは痛いだけだから別に良いんだけど、いいやあんまし良くないんだけど。ともかく本当に嫌なのは、あいつらがあたしバカにしてるってことよ。

 それがムカつくのー。

 自分で人の頭に水ぶっかけておいてへらへら笑うとか。服脱がせておいてはやし立てるとか。そこいらで土下座要求するとかさ。背中なんて何回焼かれたもんか分からんし、馬乗りになられて何も抵抗できないって、かなり腹立つ。

 なんかもう、殺しちゃいたい。

 そんなこと考えちゃいけないんだろうけれど。

 だってあたしはこんなバカでも生きていたいと思うし、あいつら死んじゃっても喜ぶのあたしだけだし。

 でもさ。

 溜飲は下げたいんだよ。

 そうじゃなきゃ、駄目だと思う。

 駄目駄目駄目よ。駄目駄目駄目。

 そんな訳で。

 なんか考えて。


 どれくらい覚悟あんの?

 問題はそれだよ。

 将来を犠牲にする心意気があれば、相手の家に火をつければ良い話だよ。これ最強。敵の家が焼けるのを高笑いしながら見物なんて、最高じゃん。

 後。犬とか猫とか殺して家の前に置いとく。これもかなりイカす。

 ぎゃー。とか、わー。とか、言ってるのを観察。素晴らしい。

 朝早く学校に来て、上履きに何か仕掛けるのも良いね。

 

 覚悟なら全然ないよ。リスクは少なければ良いし、でも威力はある方が良いかな。

 上履きに仕掛けってのは。あたしが疑われない理屈がないからNG。犬、猫は何かヤバいからパス。

 何かない?

 

 リスクないってんなら、いじめられた時のこと文章にまとめて警察とか行けば?

 筆記でも証拠になる時代なんだぜ、今は。

 

 本当? へぇ。

 確かに、あいつらやってること犯罪だもんね。懲役刑とかならないかな。

 

 あんたいくつ?


 中二


 若いね。俺高一。

 ちなみに、いじめっ子。


 ふうん。どんな気分よ、いじめって。

 

 ぷぎゃー! だな。強いて言うなら。人差し指を突きつけて、自分の力で人がすげぇ目にあってるのを観察する。これ最高。至福。

 相手が自分で望んでいないことをさせるのって、すげぇいいもんだよ。支配ってか。そんな感じ。

 ちょっと違うな。何だろ。目の前にさ。怖いとか悔しいとか、死ねとか殺してやるとか、情けないとか死んで野郎かとか、俺はやればできるんだとか、ものすごい勢いで感情渦巻くいじめられっ子がいてさ。その火薬みたいな感情を俺が制御すんのよ。スリルとサスペンス。圧倒的眩暈感。とても表現できないね。

 

 ふうん。

 やっぱ楽しいんだ。

 

 楽しくない訳ないじゃんけ。

 本当。

 それでさ。あんたの言ういじめられっこに原因あるって。あれは違うと思うよ。

 おまえと一緒で、俺も比喩って好きだけれど。鉛筆と消しゴムじゃん。消しゴムの存在は鉛筆に依存するけれど、そのどっちが被害者どっちが加害者ってーこともない。主犯も共犯もない。

 記すという行為を行なう上で、どっちも必要なんだ。

 ただ。文句を言うのが被害者で、楽しんでるのが加害者さ。

 

 訳分からん。

 鉛筆が書くのやめたらいじめ終わるじゃん。


 鋭いね。

 そうさ。つまりそういうこと。

 被害者だけでもいじめは成立しちゃう訳。教室に一人しかいないなら別だけれどな。

 

 そーゆー問題じゃないんだよ。

 いじめっ子として、いじめられっ子に何されたら嫌なの?

 それだけ聞きたい。

 

 ああ。それな。

 捨て身ってのが一番きつい。逆らってこられたら終わるしな。

 チクりが最悪ピンチだな。

 

 へぇ。

 でも、あたしの加害者は成績三位の優等生だよ。先生受けも良いし、頭も良いし、言い訳うまいし。多分、あたしに大人は味方にできない。

 

 じゃあ自殺しろ。

 遺書書いてな。

 

 無駄だと思う。

 それに、死ぬのはやだな。

 

 そりゃそうだ。

 

 そりゃそうだよ。

 

 じゃ。根競べだ。


 何よ。


 そいつがおまえをいじめる間中。おまえもそいつをいじめるんだ。方法は何でも良い、とびっきり陰湿なのにしてやれ。何ならアイデア提供してもかまわん。

 

 どういうこと?


 おまえがいじめるのやめないと、あたしもいじめるのやめないよ、ってこと。


 無理。

 

 何でよ?


 あたし。根気ないもん。途中で飽きる。つーかそんなの、向こうに何されるかわかんない。

 別に良いんだよ。いじめを停めるなんて別に。

 無理に決まってんじゃん。

 あたし、別に平気だし。平気じゃないけど。

 とにかくそれは無理。溜飲下げられたら良いんだからさ、何か考えてよ。


 中学校だろ? 給食に裁縫針入れろ。

 

 裁縫針?


 ああ。おまえが担当しているもので良い。おかずの中に裁縫針を一つだけ入れるんだ。

 

 そんなの。誰に当たるか分からないじゃない。

 

 知るか。ようするに、溜飲が下がれば良いんだ。そいつを殺そうとしたっていう事実がありゃ、少しは立ち直れるだろ。自信も付くしな。

 

 なるほど。頭良い。

 

 そーゆーこった。頑張って来い。


 イエス。ありがとね。



 いちにちけいか



 どーしよ。

 おもしろいくらいに大当たりしちゃった。


 ああ。俺の妹が針飲んで救急車で運ばれやがった。

 

 ごめん。あんた杉村の兄ちゃん?


 おう。そういや俺の妹も成績三位だったなとか思ったよ。

 それで。一位の奴いじめてるの自慢してた。

 ああ。ちなみに俺は本当はいじめられっこで。いじめっ子としての俺の意見は、まんま妹の意見だから。


 すごい偶然ね。


 だな。


 ごめん。妹殺しちゃって。


 謝れ。

 

 ごめん。

 

 まーしょーがねーや。三宅さん? あんた、成績良いし美少女なのに、性格と頭の作りが残念な人なんだろ。


 そー。


 まあ。ここで話してりゃだいたい分かるけどよ。あんた本当ヤバい。下手すりゃ人殺すような女だ。


 もう殺しちゃったよ。


 妹はまだ死んだって決まってねぇよ。


 死んだんじゃない? どーしよ。バレたら死刑なのかな?


 おまえ幾つよ?


 十三。


 じゃ。何もないや。


 何も?

 

 ああ。十三はお咎めなし。責任能力ありません。調べてみろよ、十三以下は何しても無罪で、十三より上は少年裁判所、十五より上なら刑務所入るし、十八なら絞首刑。


 そうなんだ。


 おう。人を殺すなら今のうちだったんだぜ。良かったな。


 やったぁ。


 喜ぶなよ。


 ごめん。結構怖かったから。


 人を殺しといて、怖いのは警察だけか?

 

 だってあたし悪くないし。そりゃ。杉村に同情もするよ。喉に針刺さるなんて、すげぇいたそうだし。若くて気楽なうちに死ねて良いなとも思うけれど。でもあたし悪くないから、あたし何も思わなくて良い。


 うわ。マジキチ。


 それで結構。


 ほんまもんだな。おっかねぇ。でもさ、おまえさんよ。俺はどうすりゃ良いんだ? 間接的にも、妹を殺したようなもんなんだぜ俺。


 杉村好きだったの?


 ぜんぜん。

 

 じゃ。良いじゃん。


 人の命だぞ?


 募金箱に百円入れるの渋ったら、それが殺人になるでしょ? 薬は十円で人を三人救うんだから。別に人殺しなんて大したことじゃないよ。やってみたらやってみたで何かそんな感じ。


 マジキチ理論。

 

 筋は通ってるもん。


 おまえの頭のネジの方が大変だわ。


 そう? 


 そう。本当マジキチだな。ああ。何でおまえなんかと会っちまったんだろう?


 知らないよ。あたしは嬉しいけれど。


 なあ。

 

 何?


 俺、今からおまえの家いくわ。


 何しに来るの?


 おまえを殺す。

 

 やっぱり?


 ああ。溜飲下げるにはそれしかないからな。俺が人間らしくあるにはね。


 あたしは?


 逃げれ。


 分かったよ。警察呼んどく。あたし十三だから、事情話したって何にもならないもんね。


 さすが学年トップ。理解力が高い。んじゃ。今から行くわ。


 はいよー。じゃ。110プッシュしとく。

 でもさ。あなたやってること妹と一緒じゃん。

 あたしが言えないけどさ。

 悪いと思ってるよ。本当は。

 でもさ。あたしだって、こうしなくちゃどうにもならなかったんだもん。

 高一でしょ。あたしより大人でしょ。だったら我慢してよ。格好良いことしてよ。

 終わらせようよ。どうにかさ。

 一杯謝るからいーでsy

 あれ。

 家。近かったんだ。

 階段上がってすぐ左だよ。お父さんやお母さんには、迷惑かけないで。何て最後に書いたら、すっげー良い娘だよね。殺人犯だけれど。

 やっぱあたしグズだな。

 ごめんなさい、みんな。

 悪いのは全部、俺です。


 はっぴーえんど


 読了ありがとうございます。

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