NTR男は後輩女子と授業を受ける
『NTR男』という不名誉なあだ名が付いている人間。それがオレだ。こんなあだ名が付いていることに心当たりがないと言えばウソとなるので、それは甘んじて受け入れるつもりだ。
周りから避けられているのも、良い方に捕らえれば席が空いていて座りやすい。そんな日常自体をオレはそこまで嫌ではなく、この日常にも慣れてしまえば何も気にすることはない。
だが、そんなオレの日常に最近おかしいことがある。それは隣に視線を移すとわかる。
「ねぇ、センパイ!」
「なんだ?」
笑顔満点で何も疑っていなさそうな顔をしている奴。
「今日の講義が終わったら一緒にご飯を食べに行きましょうよ!」
「お前はこれで講義が終わりかも知れないが、オレは五限目まで講義があるんだよ」
「え~こんな可愛い後輩がいるんですよ~~」
「可愛い奴は自分のことを可愛いって言わないと思うぞ」
「そんなことないですって。可愛い人は自分の可愛さを周りにアピールしたいから自分自身でも言うと思いますよ~」
周りの視線もそれなりに気になるものだと思うが、隣のこいつは全く気にしている様子がない。
「じゃあ、仕方ないですね。私もセンパイの講義が終わるまで待つことにします」
「他の奴を誘えば済む話だと思うが」
オレとしては思ったことを口にしただけだが、どうやらこいつにとってこの発言はお気に示さなかったようだ。只でさえ、隣なのにさらに腕を抱きしめてきたりして距離を詰めて来る。
「私が行きたいのはセンパイとです!それ以外の人と行っても楽しくありません。センパイと一緒だから楽しいんです。わかりましたか?」
お互いの吐息が聞こえるし、分かる距離まで近付いている。
「…分からんが、お前の熱意だけは分かった」
「分かればよろしい。じゃあ、センパイの講義をずっと隣で受けますね」
「ラウンジで待っていればいいだろう」
「嫌ですよ。折角、センパイと一緒にいられるのにその機会を棒に振るなんて」
こいつの思考回路は本当に意味が分からない。それになんでこいつにここまで好かれているのかも未だに分かっていないのが現状だ。
「だが、お前は次の講義取ってないだろ?」
「はい。取っていません。でも、別に講義を聞くことはできますよ」
「退屈だろ。最初から取っている講義ならまだしも途中から聞く講義こそつまらないものはないと思うが」
何故なら全く理解できないからだ。講義はあくまで連続性なのだ。前の講義を聞いたからこそ、理解できるというものもある。
そういう講義において、途中の講義だけ聞くと本当に分からず、退屈なのだ。
だが、隣のこいつは満面の笑みだった。
「つまらなくはありませんよ。だって隣にセンパイがいるんですもん。つまらないわけがないです!」
本当にこいつ……いや、海野美夜のことは分からない。




