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カワウソのウソ

作者: Tachun
掲載日:2026/05/30

川辺に、一匹のカワウソが住んでいました。


名前は「ウソ」。


ウソは、みんなを笑わせるのが得意でした。


「昨日ね、空を飛ぶ魚を見たんだ」

「この川の底には宝物があるんだよ」

「ぼく、ほんとは百歳なんだ」


みんなは、

「またウソのウソだ!」

と笑います。


でも、本当は。


ウソは、一人ぼっちでした。


---


ある冬の日。


森に雪が降りました。


みんな家族のところへ帰っていきます。


けれど、ウソには帰る家がありません。


ウソのお母さんは、

ずっと前の嵐で、

はぐれてしまったのでした。


だけどウソは、

誰にもその話をしませんでした。


誰にも心配をかけたくなかったからです。


だから、

ずっとウソをついていました。


「ぼく、ぜんぜん寂しくないよ」


---


その夜。


雪の中で、

小さな鳥が震えていました。


羽を痛めて、

飛べなくなっていたのです。


ウソは言いました。


「だいじょうぶ。

ぼくの家、すっごくあったかいから」


でも、本当は。


ウソの家は、

冷たい石の穴でした。


風も入るし、

魚もほとんどありません。


それでもウソは、

鳥を中へ入れて、

自分のしっぽを毛布みたいに巻きました。


「ほら、あったかいでしょ」


鳥は、うとうとしながら聞きます。


「ねえ……

それもウソ?」


ウソは少し黙って、

初めて言いました。


「……うん。

でも、あったかくしたいのは、本当」


---


朝。


雪がやんでいました。


鳥は飛べるようになっていました。


飛び立つ前に、

鳥はウソへ言います。


「きみのウソ、

ほんとは優しいんだね」


ウソは、

何も言えません。


ただ、

少しだけ泣きました。


---


春になるころ。


森のみんなは気づきます。


ウソは、

自分のためのウソじゃなくて、


誰かを寂しくさせないために、

笑わせるために、

あったかくするために、


ウソをついていたことを。


---


みんなで魚を食べながら、

鳥が言います。


「ねえウソ。

今度はほんとの話、聞かせてよ」


ウソは少し笑って、


「……実はね。

空を飛ぶ魚は、まだ探してる途中なんだ」


するとみんなは、


「それはほんとかもね!」


と笑うのでした。


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― 新着の感想 ―
拝見させていただきました。 ほっこりしますね。優しいうそか… 読みやすいお話だなと感心しました。 これからも頑張ってください。
素敵なお話をありがとうございます。
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