カワウソのウソ
川辺に、一匹のカワウソが住んでいました。
名前は「ウソ」。
ウソは、みんなを笑わせるのが得意でした。
「昨日ね、空を飛ぶ魚を見たんだ」
「この川の底には宝物があるんだよ」
「ぼく、ほんとは百歳なんだ」
みんなは、
「またウソのウソだ!」
と笑います。
でも、本当は。
ウソは、一人ぼっちでした。
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ある冬の日。
森に雪が降りました。
みんな家族のところへ帰っていきます。
けれど、ウソには帰る家がありません。
ウソのお母さんは、
ずっと前の嵐で、
はぐれてしまったのでした。
だけどウソは、
誰にもその話をしませんでした。
誰にも心配をかけたくなかったからです。
だから、
ずっとウソをついていました。
「ぼく、ぜんぜん寂しくないよ」
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その夜。
雪の中で、
小さな鳥が震えていました。
羽を痛めて、
飛べなくなっていたのです。
ウソは言いました。
「だいじょうぶ。
ぼくの家、すっごくあったかいから」
でも、本当は。
ウソの家は、
冷たい石の穴でした。
風も入るし、
魚もほとんどありません。
それでもウソは、
鳥を中へ入れて、
自分のしっぽを毛布みたいに巻きました。
「ほら、あったかいでしょ」
鳥は、うとうとしながら聞きます。
「ねえ……
それもウソ?」
ウソは少し黙って、
初めて言いました。
「……うん。
でも、あったかくしたいのは、本当」
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朝。
雪がやんでいました。
鳥は飛べるようになっていました。
飛び立つ前に、
鳥はウソへ言います。
「きみのウソ、
ほんとは優しいんだね」
ウソは、
何も言えません。
ただ、
少しだけ泣きました。
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春になるころ。
森のみんなは気づきます。
ウソは、
自分のためのウソじゃなくて、
誰かを寂しくさせないために、
笑わせるために、
あったかくするために、
ウソをついていたことを。
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みんなで魚を食べながら、
鳥が言います。
「ねえウソ。
今度はほんとの話、聞かせてよ」
ウソは少し笑って、
「……実はね。
空を飛ぶ魚は、まだ探してる途中なんだ」
するとみんなは、
「それはほんとかもね!」
と笑うのでした。




