第三話 共鳴の失敗と、歌にならない声
目を覚ますと、
空が、
やけに近かった。
石の冷たさが、
背中に残る。
私は、
自分が
倒れていたことを
知った。
「動くな」
低い声。
アルベルトが、
私のそばに
立っている。
「……ごめんなさい」
何に対してか、
自分でも
分からないまま、
そう口にした。
精霊碑は、
沈黙していた。
あれほど
重なっていた声が、
今は、
遠い。
「フィオ」
ディーンが、
感情を
押し殺した声で
言う。
「説明してくれ。
今の現象は、
再現できるのか?」
胸が、
きゅっと
縮んだ。
「分かりません……」
「分からない、
では困る」
語気が、
強くなる。
「力とは、
制御できて
初めて、
力と呼べる」
正しい。
正しいからこそ、
何も
言い返せなかった。
「ディーン」
アルベルトが、
静かに
制した。
「事実だ」
ディーンは、
引かない。
「偶然で
発動する現象は、
危険だ」
「仲間を
巻き込む」
その言葉が、
胸の奥に、
深く
刺さった。
私は、
何も言えず、
うつむく。
その瞬間だった。
空気が、
震えた。
地面の下から、
何かが、
目を覚ます。
「――来る!」
ルナリアの声が、
鋭く
響いた。
遺構の中心から、
歪んだ魔力が、
噴き上がる。
精霊だ。
けれど、
さっきの声とは、
違う。
怒り。
焦り。
抑えきれない
渇き。
「フィオ、
下がれ!」
でも、
体が
動かなかった。
精霊の声が、
直接、
胸に
流れ込んでくる。
――違う。
その一言で、
世界が、
反転した。
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精霊視点・断章
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待っていた。
長い、
長い時間。
命令ではない。
契約でもない。
こちらを、
見てくれる
存在を。
けれど、
彼女は、
まだ
迷っている。
手を伸ばせば、
壊してしまいそうで。
だから、
声が、
叫びになる。
共鳴は、
まだ、
歌にならない。
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気づいたとき、
私は、
叫んでいた。
「やめて!」
精霊の魔力が、
一気に
膨れ上がる。
アルベルトが
前に出て、
剣で
受け止めた。
ミカが、
私を
庇うように
立つ。
「フィオ、
集中しろ!」
集中?
どうやって?
命令じゃない。
お願いでもない。
私は、
震える声で、
ただ
思った。
――分かりたい。
次の瞬間、
精霊の暴走は、
ぴたりと
止まった。
沈黙。
ディーンが、
信じられないものを
見る目で、
私を見る。
「……今のは」
「失敗です」
私は、
はっきり
言った。
「でも、
失敗しないと、
分からない」
ルナリアが、
小さく
息を吐く。
「星は、
間違えない」
「揺れながら、
軌道を
決めるだけ」
ディーンは、
何も
言わなかった。
ただ、
少しだけ、
考えるような
顔を
していた。
私は、
まだ、
強くない。
でも、
逃げるつもりも、
なかった。
精霊の声が、
今度は、
静かに
響く。
――次は、
ちゃんと
聞く。
それが、
私の、
最初の一歩だった。




