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第一話 役に立たない精霊使い

 


 また、

 私だけ何もしていない。


 


 瓦礫の散らばる石床の上で、

 私は小さく息を吐いた。


 


 アルベルトの剣は、

 赤黒い魔力をまとい、

 魔獣の核を正確に断ち切る。


 


 ミカは軽やかに背後へ回り、

 最後の一撃を叩き込んだ。


 


 ルナリアは詠唱を終え、

 星の光で戦場を照らし、


 


 ディーンは戦闘の最中でも、

 魔力反応を記録している。


 


 ――私だけが、

 立っていただけだった。


 


 


 精霊の声は、

 聞こえていた。


 


 足元の石。

 壁に染み込んだ水脈。

 空気に残る、

 微かな熱。


 


 全部が、

 私に何かを

 伝えようとしていた。


 


 でも、

 どう応えればいいのか、

 分からなかった。


 


「怪我はないか、フィオ」


 


 アルベルトが、

 剣を納めながら

 声をかけてくる。


 


 低く、

 落ち着いた声。


 


 それだけで、

 胸の奥が

 少しだけ痛んだ。


 


「……はい。

 大丈夫です」


 


 本当は、

 心の方が

 無事じゃなかった。


 


 


 私は、

 このパーティーに

 必要なんだろうか。


 


 星巡りの書架。

 知識と力を求める

 この旅において、


 


 精霊と話せるだけの私が。


 


 


 ミカは笑顔で、

 私の腕を叩いた。


 


「フィオが無事なら、

 それでいいよ!」


 


 その言葉が、

 優しすぎて、

 かえって苦しかった。


 


 


 夜。


 


 野営の焚き火のそばで、

 私は一人、

 精霊に問いかける。


 


「……私、

 ここにいていいの?」


 


 返事はなかった。


 


 ただ、

 風が

 少しだけ揺れた。


 


 


 そのとき、

 背後に

 気配を感じる。


 


「無理に答えを

 出さなくていい」


 


 アルベルトだった。


 


 隣に座るでもなく、

 少し離れた場所で、

 同じ火を見ている。


 


 


「君の力は、

 まだ形になっていない

 だけだ」


 


「……慰めですか?」


 


 そう言った瞬間、

 胸が

 締めつけられた。


 


 


「違う」


 


 短く、

 はっきりと。


 


「形にできない力を、

 俺は

 何度も見てきた」


 


 その横顔は、

 火に照らされ、

 ひどく真剣だった。


 


 


 どうしてだろう。


 


 その言葉が、

 胸の奥に、

 静かに

 染み込んでいく。


 


 


 精霊の声が、

 ほんの一瞬だけ、

 はっきり聞こえた。


 


 ――まだだ。


 


 


 私は、

 焚き火を見つめながら、

 そっと拳を握る。


 


 役に立たないなら、

 立てるようになればいい。


 


 それが、

 この場所にいる

 理由になるなら。


 


 


 星空の下、

 私はまだ知らない。


 


 自分の力が、

 この世界の星を

 揺るがすことを。


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