帰り道を急ぐ2
「手強かった……」
地に斃れ伏した3人の剣士を見下ろしながら、ヘイレング卿は呟いた。
3人はそれぞれにフライングV、スカイソード、エクスプローラーといった鋭い剣を抜いて襲いかかってきた。武器を持っていたとはいえ、徒手空拳のヴァンパイアを相手に手こずらせるとは流石の恐怖の蠍団であった。
「帰るんだ」
ヘイレング卿が再び早足で歩き出す。
「あの明るい人間の街へ」
こんな森の中を寂しく通る泥の道ではなく、石畳の上を早く歩きたかった。賑やかな市場やアパルトマンが既に懐かしい。一刻も早く温かいトマトスープを口にしたかった。
しかし帰り道の方向がわからない。月は黒く、彼を惑わせていた。ぐるぐると同じところを回っているような気がする。飛行能力はなるべく控えたかった。もう半日もトマトスープを飲んでいないので、体力は温存すべきであった。
「イーーッ!」
甲高い声が、地の底から聞こえた。
思わずヘイレング卿が足を止め、見回すと、そいつらは地の底からせり上がって登場した。
「アーーーッ!」
禿頭の大男が超ハイトーンで叫ぶ。
「アイ・アム・メタルゴーーーッド!」
大男を挟んで両脇に、それぞれにHAMER剣を横抱きにした優男が2人、体を前後左右に激しく揺さぶっている。
「誰だ!?」
ヘイレング卿が叫ぶと、真ん中の男が名乗った。
「アイ・アム・メタル・ゴッド、ロビン・ハゲフォーーード! イーーッ! 左右に控えしは従者のグレン・リプトン! そして……」
金髪のほうの従者を睨むように見ると、唾を飛ばした。
「ZZ・ダウニング! 貴様、脱退したんじゃなかったけカーーーッ!?」
ヘイレング卿はミアの頭蓋骨をそっと地面に置くと、身構えた。
「ペイン・キラーを貴様に喰らわせてやるよォーッ!」
そう言うとメタル・ゴッド、ロビン・ハゲフォードが渾身の力を込めて、超音波のごとき殺人ハイトーン・ボイスを頭のてっぺんから放ってきた。
「センチネーーール! 法を破れェーッ!」
「こいつらも手強かった……」
地に斃れ伏した3人を見下ろしながら、ヘイレング卿は汗を拭いた。
さすがはメタル・ゴッドだった。しかし寄る年波には勝てず、必殺技『ペイン・キラー』の超音波級のハイトーン・ボイスに無理があったようだ。とても苦しげに蹲りながら「アアーーーッ!」と呪文のように呻いているところをボコったら、一発で昇天した。メタル・ゴッドがやられると従者の二人は喧嘩をしながら逃げ出していった。
「キリがない……」
黒い月を見上げ、ヘイレング卿は呟いた。
「帰るんだ。人間の街へ!」
松明の炎が森の隙間に見えた。
今度はスラッシュ四天王か? それこそキリがない──と不安に思っていると、松明を持った集団の姿が近づいてきた。
「エディー……。見つけたわ」
魔女タル・アイオミを先頭に、黒い集団が接近してきた。




