秋
夏には青々と茂っていた桜の葉も、秋になると朱色に色づいて、ハラハラと落ちていく。
この頃には俺と彼女の仲はほんの少しだけ進んでいて、頼めば読んだ本の内容を話してくれるようになった。
「……それで、死体は桜の下に埋められたんじゃなくて、死体が葬られた場所に後で桜が植えられたってわけ」
「それってトリック的に可能なのか?」
「可能か不可能で言えば、かなり不可能に近いけど。そんなの言ったらあなたの読んでるそれに出てくる魔法だの精霊術だのスキルだのチートだのの方が非現実的でしょ」
「確かに」
そんなどうでもいいような会話でも、俺は楽しかった。
彼女の好む本のジャンルを知った。彼女が俺の貸したラノベを読んでくれるようになった。……彼女の貸してくれた本は俺には難解過ぎてさっぱり読めなかったが、貸してもらえたという事実だけで嬉しかった。
秋というと学校では体育祭と文化祭というイベントがある。
今までそれをずっと鬱陶しく思っていたが今年ばかりは違う。
人生で初めて神様に感謝しなければならないと思った出来事が起きたのだ。――だって両方とも俺は、彼女とチームを組むことになったのだから。
体育祭は二人三脚をした。
二人三脚といえば、足をすり寄せ、体がピッタリ触れ合うわけである。櫻井さんの体は走っているせいか俺といるせいなのかほんのり高揚し、俺の心臓は爆発しそうなくらいバクバクしていた。
一方で文化祭は一緒に焼きそばを作って振る舞った。
こちらはあまり櫻井さんと直鉄的な接触できなかったが、初めての共同作業ということで俺の内心での盛り上がりは体育祭の時よりもすごいものだった。まさしくお祭り騒ぎだ。
この頃になると、俺は櫻井さんと両想いなのではないかという風に思い始めていた。
ふと見せる彼女の一つ一つの仕草や言動がそう思わせるようになったのである。時たま視線も感じる気がするし、体育祭や文化祭の時の様子を見れば十中八九脈ありなのではないか。
だがなかなか告白する勇気は持てなかった。
彼女の言う、ロマンのある告白というのが一体どういうものなのか、いまいちわからないからだ。
状況を整えなければ首を縦に振ってはくれないだろう。それではやり直す意味がない。
だから俺は、青春小説やら恋愛映画などを食い入るように見続けてシチュエーションを考えることにした。
そうこうしているうちに十一月がやって来る。
秋が深まり、徐々に冬の足音が聞こえる季節となった。




