油断大敵
現代社会を匂わせる剣と魔法の世界のハイファンタジー!
油断は禁物!
手順の通りに!
行動は慎重に!
今日も一日!グリュックアウフ!
ようやくダンジョンに入れた...
とふっと思ったのは鎧を纏い、剣を担いでいる戦士の男だった。
初心者向けのダンジョンでここまでやるのか?俺たちはモンスターを討伐したことがないみたいな扱いをしやがって...
と不服な顔をした戦士の男はただそのダンジョン案内人兼通訳と仲間の後に歩いて、そう考えた。
一方、ダンジョン案内人兼通訳のスケトは歩きを止めて、地図を取り出した。
「では、ここからはトラップが設置されていますので、位置の確認をしましょう。神官のお客さん、少し光りをこちらに寄せてくれませんか?」と訪ねたのはダンジョンに入ってから、道を照らしくれた光の球を使った神官の男だった。
「はい!」と返事した神官の男は光の球をスケトの上に移動させた。
「トラップぐらい...歩きながら、対処すればいいでしょう...」と口を出してきたのはさっきかから不満そうな戦士の男だった。
「いけません...油断大敵です。さらに、地図を見ながら歩くなどのながら行為には集中力が低下して、周りに何かあるかぼぼ認識できなくなります。」と冷静に正論で返したスケト。それに対して、さらに不機嫌になった戦士の男。
とそこで「トラップの解除をするためには何か必要ですか?」と問いかけた魔法使いの男。
「手順に踏まえて、トラップ解除をします。」と答えたスケト。
「手順?」とここでダンジョンに入ってから盗賊の女、ヴィオが第一声を上げた。
「簡単に言うと、ブロック状の床を手順の通りに踏めばトラップが解除できます。この地図に書いてある番号の通りに踏めば大丈夫です。」と言った途端、
「いちいち待ってられるか!先進のみだ!」と戦士の男は我慢ならずに歩き出した。
「いけません!お客さん!そこは!」と言ったそばから戦士の男が踏んだブロック床に何かを起動させた音がした。
「伏せろ!」とすぐさまに叫んだスケト...それに反応して、ひれ伏せた他の人...しかし、魔法使いの男の反応が一歩遅いかトラップ発動で放たれた矢が魔法使いの男に向けられた。
運が良く避けられたが、避けきれなかった。
「うっ!」と痛みで声が漏れた魔法使いの男。
「大丈夫か!?」と急いで、ひれ伏せの状態から起き上がろうとした神官の男だったが、
「まだ安全が確認できません!そのまま伏せてください!」と伏せながら、神官の男に言ったスケト。
しばらくして、これ以上の矢が来ないことを確認してから、スケトは起き上がり、魔法使いの男のところに走り出した。
「大丈夫です。ただのかすり傷だけで...うっ!」と様子が少し変になった魔法使いの男。
そこで彼の手の甲を確認したスケト。
「これは...【毒】。手の甲にドクロのマークが現れました。早く消毒を!」とスケトは神官の男の顔を見たが、
「すみません...私は治療魔法にはまだ取得していません。」と申し訳なさそうに言った神官の男。
「なら...消毒液で手当てをします。」とアイテムが入った袋から水とアンチドートのボトルを出して、傷口に順番に注いだ。
時間が経つと、手の甲にあるドクロのマークが徐々に消えて、魔法使いの男の顔色もよくなった。
「ふーヒヤッとしたな...」と言う言葉を口にした戦士の男に魔法使いの男が回復して早々、文句を言い始めた。
「そもそも...僕がこの状況になったのはあなたのせいですよ。」
「すみませーん。今後気をつけまーす。」という軽い返事をした戦士の男に対して、スケトは静かに立ち上がり、戦士の男にこう言った。
「これはヒヤリハットじゃありません...立派な探索中の不休災害です。実際に怪我をして、バステまで出ました。手当てで対処できたからいいですが、一歩間違えば、もっと深刻な被害や他の仲間にも巻き込まれるかもしれません。自分の行動にはもう少し慎重にしていただけないでしょうか?」というスケトの注意に対して、さらに不機嫌になり、戦士の男は自分の怒りを神官の男に向けた。
「だいたい神官のくせに、本当にお前使えないな...そういう治療とかは神官の仕事でしょう?」と言い始めた戦士の男。
「ごめん...別のスキルのマスターを優先したから、治療魔法を学ぶ余裕が...」とまた申し訳なさそうに言った神官の男。
そこでスケトは突然表情が少し険しくなり、話す口調は冷徹さを保ったままだが、声の中には静かな怒りが隠れていると感じさせた。
「神官のお客さん...謝る必要は一つもありません。そして、そちらのお客さん...一つ言わせていただきます。どのジョブでも自分の役割があります。優劣なんてありません。そして、必ず必要になったときがあります。そして、回復などの【作業】は神官の役割だけだと勘違いしないでいただきたい。強化魔法も治療魔法も防御魔法も神官にしかマスターできない魔法です。お客様のパーティでは今神官が一人しかいません。彼の負担も相当大きいのです。代わりにそれがこなせる人がいない以上、自分ができる範囲のことをやって、仲間の負担を減らすことは基本です。そのためのポーションや他のアイテムがあります。そこだけはご理解いただきたい。」とその静かな怒りが隠れた顔で戦士の男に近づけて、淡々と述べたダンジョン案内人から出た正論の言葉に戦士の男は怯える半分悔しさ半分の顔で「わ...分かったよ!」と言った。
そして、いつもの表情に戻ったスケトは笑顔になった。
「ご理解いただけたら、それでいいのです。では、ここからは順番に踏まえて、トラップの解除をしましょう。」
「目が笑えないけど...」というツッコミを入れたのは回復して立ち上がった魔法使いの男。
「代わりに怒ってくれて嬉しいけど...ちょっと怖いね...」と言った神官の男。
スケトさん...急にその表情になったのは...少し驚いた...やはり前の職場というところで何があったのかな...と声を出さずに頭の中に考えたヴィオだった。
最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは二作目の作品になります。
初めて書いた作品、Memento of ランカ ~羅刹羅闍との日本ぶらり旅~という作品は現在連載中です。もしよろしければ、そちらにもご一読いただければ幸いです。↓
https://ncode.syosetu.com/n7903hf/
この作品はあくまで険と魔法の世界を舞台にしたハイファンタジーの設定ですが、どこかで現代社会を感じさせるような要素をいくつか入れていくと考えます。何かのお気づきや何かしらを共感することができれば嬉しいです。
ついにダンジョンに入りました!(ようやく...888)
そこで、定番のダンジョンのトラップの話になって、やはり誰がうっかり踏んだり明らかに変なスイッチを押したりする展開とは違って、よりシリアスな雰囲気にしました。
ここで慎重派の主人公とそうではない人と考えの違いを表したいと思い、このような形で書きました。
ここでヒヤリハットや不休災害ってなんじゃ?とハテナになった方はぜひ検索してみてください。これはやはり限定な業界の言葉なので、あまり一般では使われていません。
実際には怪我をしてもすぐに手当てで対処できるとできないものでまた受傷程度が変わります。(だから...受傷程度ってなんだよ...笑)
本当にファンタジー世界にこのような要素を入れることになると、バランスを考えないといけませんね。
しかし、自分の行動には何かの結果を招くということでより油断せず慎重に責任を持って行動することを少し意識していただければと思います。
では、次はどのような展開になるか次回にはお楽しみに!
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
更新予定はまだ確定ではありませんが、連載を続けたいと思いますので、お楽しみいただければ何より幸いです!