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レンとレンの恋物語  作者: 栗須帳(くりす・とばり)
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003 恋の願い

 


(れん)ちゃんと彼氏くんの未来が見たいと」


「うん、そう」


 ミウを見つめる(れん)の瞳は、キラキラ輝いている。


「私たちってね、子供の頃からずっと一緒だったんだ。親も仲がいいし、お互いの家にお泊まりとかもよくしてたの。

 私はずっと(れん)くんのことが好きだった。(れん)くんってね、いつも本ばっかり読んでいて、友達もいなかったんだ。外で遊ぶこともあんまりなかった。

 でもね、私がお願いしたら一緒に遊んでくれるの。それがすごく嬉しくて……いつの間にか(れん)くんのこと、好きになってた。

 いつか付き合いたいって思ってたけど、でもほら、こういうのって女の方から言うのも恥ずかしいじゃない? だから私、ずっと待ってたの。(れん)くんに告白されるのを」


 瞳を爛々と輝かせてまくし立てる(れん)に、ミウは苦笑した。


「半年前、ついに願いが叶った。(れん)くんが告白してくれたの。そりゃもう、あの(れん)くんだからね、分かるでしょ? 顔真っ赤にして、何言ってるのか聞き取れないぐらいぼそぼそと、なんだけどね」


 いやいや僕、(れん)くんのこと知らないし。ミウが心の中で突っ込んだ。


「でもね、それでも嬉しかった。(れん)くんが勇気を振り絞って告白してくれた。涙まで浮かべて、必死になって私に伝えてくれた。

 その姿を見てね、私、ちょっとだけ後悔したの。こんなに大変なことなんだったら、私の方から告白しちゃえばよかったって。男だとか女だとか言う前に、自分の気持ちに正直になっていればよかったって」


「まあ一理あるかな。人間の社会ではそういう役割、男の方がするみたいだけど、女の方から求愛する生物もいることだし」


「でも嬉しかった。だから私、その場で(れん)くんに抱き着いちゃったの。そして『私でよければお願いします』って言ったんだ」


 そう言ってまた枕に顔を埋め、「きゃーきゃー」と声を上げる。


「……その時ね、(れん)くん言ってくれたんだ。『僕は(れん)を大切にする。(れん)が嫌がることは絶対にしない』って。それでもう、私の心臓は打ち抜かれた訳なのよ」


「そして今日、その(れん)くんとついにキスをした」


「きゃー! きゃー!」


 あ、言わなきゃよかった。また話が長くなる。ミウが再び苦笑した。


「あの(れん)くんが、私のことを大切にしてくれている(れん)くんが、自分の意思でキスしてくれた。勿論、私にとっても初めての経験で……

 おかげでさっきまで、頭も体もふわふわしてたの。何も手につかないし、何も考えられない。ねえミウ、これって私、本当に(れん)くんが好きなんだってことだと思うの。どう思う?」


「う~ん、どうなんだろうね。僕たちにはそういう感情がないから。ちょっと答えにくいかな」


「そうなんだ。精霊って不便なんだね」


「あははっ……それで(れん)ちゃんは、(れん)くんのことが今まで以上に好きになった。大切な存在なんだと改めて思った」


「うん、そう。そしてそれはね、(れん)くんも同じだと思うの」


「なるほどね」


「だからね、これはもう将来結婚するしかないと思うんだ。そういうことを考えた時、私には(れん)くんしか思い浮かばない。これから別の男子と出会うことがあっても、今以上の気持ちになるとは思えない。と言うか、(れん)くんより好きになれる人なんていないと思う。そしてそれは、(れん)くんも同じだと思うの」


「二人の想いは一緒だと」


「うん、そう思いたい。ううん、違うな、信じたいんだ」


「そっか。でも恋愛のスタートは、まず信じることだからね」


「私、今の気持ちがずっと続くと信じてる。(れん)くんだって私のこと、好きでいてくれると信じてる。だからね、そんな未来が見てみたいの。お互いの気持ちが続いて、結ばれている未来。私は見てみたい」


「そっか。うん、分かったよ」


「見せてもらえる?」


「そうだね、何でも叶えると言ったのは僕だ。流石に、時間旅行(タイムトラベル)なんて頼まれるとは思ってなかったけど、でも未来ならいいと思う。過去でなくてよかったよ」


「どういうこと?」


「未来を知ってる人間が過去に行くと、そこで必要以上の干渉が起こってしまうんだ。言ってみれば、歴史の改変が行われるリスクが生じる」


「なるほど……そうよね、もし過去に行けるのなら、私だって過去の自分に助言しちゃうと思う。その決断は駄目だよ、別の選択を考えた方がいいよって」


「その後どうなるかを知っているからね。だからそっちを頼まれてたら、制約が多いしやめた方がいいって言ってたと思う。

 でも未来なら、話は違ってくる。過去の(れん)ちゃんが干渉した所で、それは歴史の改変にはならない。その干渉も含めて、未来の歴史になっていくから」


「でももし、未来の私や(れん)くんが、私に対して助言した場合はどうなの? それも反対の意味で、干渉になると思うんだけど」


「確かにそうなるね。でもまあ、それぐらいは大目に見てあげるよ。それも含めて、(れん)ちゃんが選ぶ未来ってことで」


「……精霊って、結構大雑把なんだね」


「あはははっ。でもまあ、命の恩人へのお礼なんだ。少々のアクシデントには目を瞑るよ」


「じゃあ、連れて行ってくれる?」


「うん、喜んで引き受けるよ」


「ありがとう、ミウ」


 (れん)がミウを抱き締める。


「それじゃあ準備するね」


「準備って?」


「うん、色々ね。まずは……どれくらい先の未来に行くのか、それからだね。任せてもらってもいいかな」


「いいよ。私に聞かれても悩むだけだし。ミウに任せる」


「じゃあちょっとだけ、静かにしててもらえるかな」


 そう言うとミウは(れん)から離れ、目を閉じてうつむいた。




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