女児の元に産まれました
ポチャン……………
雫が水面に落ちる音が鳴る。
ポタポタとその音は穏やかなテンポで鳴り続ける。
「………冷たい…………。」
その中の1粒が俺の顔を打つ…………
水深が極めて浅い水辺の様で、仰向けに倒れている俺の全身は殆ど濡れているものの顔はしっかりと水面から出ておりそこに雫が当たったのだ。
体を濡らす水はほのかに暖かいのだが、垂れてくる雫は冷えており………その冷たさが意識を覚醒に導く。
「………なんだここは…………。」
ゆっくりと上半身を起こす。
どれだけこの状態で居たのかは分からない………だが、相当な時間はこうして寝ていたようで全身が酷くこっており………酷く重い。
しかし、意識はハッキリしてる。
辺りを見回した感じ…恐らくどこかの洞窟だ。
勿論そうでないかもしれないが、薄暗く岩だらけの空間なら誰でも洞窟と思うだろう。
そして水………仰向けになった時にギリギリ顔が水面から出はする程度の水深なのだが、この暗所にも関わらず美しい碧色に輝いている。
周囲照らしているのはこの水面から発せられる光のみ……つまりこの水は水そのものが発光してるいのだ。
「不思議な場所だな………てゆうか…………俺誰だ?。」
……そう、
何も考えず、言葉を喋り……体毛の無い体と獣とは呼べない筋肉量の細い四肢の自分が『人間』であると理解出る。
ここは洞窟で、暗所で光る水が不思議と思える。
………なのに『自分』の事が何一つわからない。
知識はあるのに自分に関わる『記憶』の一切が無い。
「………マジでわからん………。俺は誰で、何をする為に何処にいるんだ?……………。」
(…………おぅ、ようやっと目覚めたか………愛息子ながら随分遅い目覚めだな。)
………空耳だろうか?……幼い女性の声が聞こえた気がする。
「………取り敢えず外に出るか。何か明かりになるものは……」
人が食事無しで生きていけるのは今の栄養状態にもよるが(おーい…)2週間は超える。水無しは1週間と持たないが、幸いここ(聞こえとるか?………)は水源そのものだ……火を起こせさえすれば何とかなるだろう(おいっ!!!)。
「…………、」
だが暗い洞窟を裸一貫で歩き回る訳には行かない。
だでさえ迷いやすい洞窟を裸でうろつこうものなら何が起きるか分かったものでは
( わ れ の は な し を 聞けぇぇえっっ!!!! )
「がぁぁぁあっ?!?!!?!。」
全身が数割膨張してから、大きく凝縮されるのを繰り返されるような………
これはあれだ……とてつもなく激しい頭痛の様な痛みが全身で起きているっ!。
癇癪を起こした女児のような……怒気を含む声の叫びに呼応するようにガンガンと痛みが響く。
(我の言葉には耳を傾けろ!!、我の言葉には反応を見せろっ!!、我の言葉には愛を持って肯定の意を示せぇっつ!!!!!!)
「わ、分かったから!!!、話でも相談でも何でも聞くからァァァ!!!!………………」
全身を蝕む不快な痛みに耐えかね頭の中に直接語りかけて来る声に必死に謝罪をする。
その声がちゃんと届いたようで、謝罪の直後に痛みが止む。
これまた頭痛のように、この痛みはあっさりと無くなり尾を引くことは無かった。
「…………そんで、我が我が言ってるけど…その『我』は何処にいるんだ?。」
先程から声は頭の中に直接響いてくる。
小さな声で囁かれてるのでは無く、頭の中から直接鼓膜を震わすように声が聞こえている。
(ここだっ!!……こっ!こぉ!!。)
「……んな事言ってもここにあるのは岩と水と…………、」
デカい水晶があった。
体を起こして丁度真後ろにあったので今の今まで気づかなかったのだが。
水と同じ碧色の馬鹿でかい水晶………その中にさっきから聞こえてくる声の主として相応しい、10歳を超えたくらいであろう少女が露出の多い黒のドレスを纏って水晶の中に居た。
(どうだぁ?、我の美貌に思わず甘い声を漏らしてしまうかぁ?。だが残念、我はお前の母親なのだからそうゆう事は男として我に認め、
「ガキじゃねぇか…………ってうぉぉぉおい、痛い痛い痛いっつ!!!。」
再び痛みに悶える…………、
本当にこれはキツい、痛みも去ることながらどうしようもない不快感が心まで酷く疲弊させる。
(我の事を見て…………どう思った?。)
「………凄く……魅力的です……………。」
(………ふん、棒読みだが……初めて我に好意的な言を述べたから許してやる。)
初めて好意的な言を述べたって、それ俺が好意を抱いてないって分かって言ってんだよな………普通にコイツちょろくないか?。
………とゆうか、こいつ………頭の中に声を伝えてくるが考えてる事は分からないみたいだな。現に今は痛みが無い。
そして……こいつちゃっかり俺について重大な事を言ってるな。
「……それで………、俺の『母親』を名乗るって事なら色々知ってんだろ?。」
(当たり前だっ!!。我を誰だと思っている??……お前の母にして、この大地……『カタリナ』を覇する魔王………『ティルア・ティアノート』であるぞ!!!。)
「あー、はいはい。そんで俺は一体何なんだっ、………て痛い痛い痛いって!…………ん?。」
再び痛みが来た………っと思ったのだが、どうゆうわけかその痛みは急速に弱まり…すこしすれば痛みが無くなった。
(………頼む………。お前だけが頼みなのだ……………、助けてくれ……………我を救ってくれ………。)
そして痛みと同じように、声もか細く弱々しいものになる。
今までは高飛車に、高圧的に叫んで来たが………水晶に閉じ込められている少女を見ると、それは無理をしていたのではないかと思う。
異様に白い、異様に細い。美麗な等とは呼べない、死にかけの体だ。
その体とこの弱々しい声は完璧に一致している、むしろ今まで良く張りのある声を出せていれたなと関心してしまう。
「………お前、死ぬんだな?。いや、その状態で意識があるとゆうなら死ぬとゆう表現があっているかは知らんが。」
(……そうだな………、全てに忘れられた我は死した何かと呼ぶべきか。それでもこうして意識はあるのだ………、だから頼む…………我は………死にたくない。)
「欲望丸出しだな………変な事言われるより信用は出来るが何にしても教えろ、俺の事もお前の事も。1つも残らずな。」
(……分かった………。話す……から………………我を…………私を……助けて………。)