席替え
こんばんは!
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五月。
「おはよ。甲斐くん」
後ろから声を掛けられた。
まだ寝ぼけていたから、驚きながら後ろを振り返ると、白咲が居た。
「ん?あ、白咲か。おはよ」
白咲は、挨拶だけすると、すぐに俺を追い越し、友達の元へ走っていく。
揺れる髪が綺麗だ。なぜか最近、早くに目が覚める。まるで、白咲と同じ時間に学校に行きたいかのように。
「いやいや、ないない。ストーカーじゃねぇか」
くそみたいな考えを首を振りながら、抹消する。
「誰がストーカーなの??」
光が、急に後ろから飛びついてきた。
思わず、後ろに倒れそうになるのを、すばるが助けてくれた。
「なんでもねぇよ」
そう言いながら、歩く。
そうだよ、なんでもない。と、自分にいい聞かせる。
「そういえば、今日席替えだろ?」
「え、マジ?」
「ああ。俺、学級委員だから、間違いない」
廉が、自慢げに俺達に言う。
むかつく...こいつ。
「どうやって決めんの?」
「クジ引き」
「一斉に開けるぞ!」
すばるが、前で取り仕切る。
「はーい!」
みんな、楽しそうだ。
そっと紙をあける。
示した数字は、今の席と同じだった...
まじかよ...
ショックで、机に伏せた。
頭を動かして横を向くと、同じように白咲も俺を見つめている。
白咲もこちらに気づき、苦笑した。
「もしかして...甲斐くんも一緒?」
「うん。また隣だな。」
「そだね...」
同じ体制で向き合っている白咲の顔が、近すぎる。
可愛すぎる...う
ドキドキする俺に対し、白咲のまぶたが、すこしずつ閉まっていく。
とうとう、ねむってしまった...
やば...
俺もつられて、睡魔が襲う。
俺も、眠りにおちた。
「んっ...」
目を開ける。窓の外はもう薄暗い。
ぼーっとしながら、教室を見渡すと、誰もいない。
「え!?」
慌てて起き上がる。
時計は6時を指していた。
いつのまに放課後になってたんだ?
「おはよ」
隣を見ると、優しい目で白咲は俺を見ている。
「え、あ、おはよ。いたんだ」
「うん、目が覚めたら、甲斐くんしかいないから、びっくりした」
「先に帰ったらよかったのに」
「起きたら、帰ろうと思ってた」
「待っててくれたの?」
白咲は、静かにうなずく。
二人で並んで歩く。
女子と一緒に帰るのは、慣れているはずなのに...
何だろ、この気持ち。
「ねぇ、甲斐くん」
「ん?」
「甲斐くんって、すごくモテるよね」
この質問、ムズイだろ...
「そこまでだろ」
謙虚にしておこう。たいして、うれしくもないし...
「彼女とかいるの?」
「いない。いたら、こんなに苦労してない」
「苦労って?」
「俺さ、昔からなんか知らないけど、女子から好かれてさ」
白咲は、黙っている。
「告られて、付き合うだろ?そしたら今度は、いろいろ求められてさ、結局、理想と違うって、消えていくんだ。それが何人も繰り返されて...俺、どうしていいのかわからなくなった」
つい、口が動く。白咲にこんなこと言っても、なんにもならないのに...
その時、急に抱きしめられた。
白咲は、俺の頭をなでる。
「大丈夫、甲斐くんは、そのままでいい。」
「白咲...俺っ、お前が...」
「あれ!太鳳じゃね!?」
急に声がして離れた。
チャラそうな男が1人、太鳳の方を見て、立っていた。
「太鳳?」
太鳳はすこし青ざめているように見えた。
太鳳に近づいている。
「やっぱり、美咲じゃん!元気だった?」
太鳳は、俺をちらっと見て、ため息をつく。
「話しかけないでよ...」
太鳳の声は、冷たく低い。
「ごめん、ごめん、邪魔しちゃった?最近、見ないと思ったら、男だったんだ」
なれなれしく言いながら、男は太鳳の肩に手を回す。
「さわんないで。もう、あの場所にはいかないって決めたの。だから...」
「わかったよ」
男は、残念そうに言って、手を振りながら立ち去った。
少しの間、沈黙が流れる。
「白咲?」
俺は、気まずそうにしている白咲に尋ねた。
白咲は悲しそうにほほ笑んだ。
前にみた笑顔と同じだ...
そこから、何もしゃべろうとしなかった...
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では、また明日、夜20時に!