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第一章 7話 「人狼専用スキル」


 ゲーム開始から2ヶ月が経ち、俺が奪った命は「30」を超えた――――――――


 

 今だ、ナヤギは最初の街から動いていない。

 初めてPKを行ったあの日から、フィールドに出ることが少なくなった。

 街中でPKを行い、殺した相手からのドロップアイテムや金で生活している。


 そんな自身に嫌悪を抱く生活を送っているナヤギをよそに、ゲーム攻略は順調に進んでいた。


 この2ヶ月で全プレイヤーの1割が死んだ。

 しかし、生き残っているプレイヤーの中からはゲーム攻略に積極的な者、いわゆる“攻略組”が出てきており、すでに3体の中ボスを討伐された。

 半年以内に次のエリアへと進むことができると噂されている。



 プロメティアは、5つのエリアに分かれている。

 それぞれのエリアには、魔王か配下の四天王が一人ずつ存在。

 魔王と四天王は“エリアボス”と呼ばれ、倒すことにより次のエリアに進むことができるようになる。

 

 エリアボスに挑戦するためには、各エリアに10体ずついる“ストーリーボス”、通称“中ボス”を倒さなくてはいけない。

 魔王を倒してゲームクリアするためには、魔王を含む55体のボスを討伐する必要があるということだ。


 各エリアの中ボスはどれから倒しても良い。

 だが、中ボスには番号が付けられており、番号が大きくなるほどレベルが高くなり強さも増していく。そのため、番号の小さい順に倒していくのがセオリーだ。

 これまでに討伐されたボスも順番に倒された。


 ボスが倒されるたびにプレイヤーたちは歓喜に湧いた。

 ゲームクリアに近づく、自分たちの生還に近づいたのだ。喜んで当然。



 プレイヤーたちが喜ぶ顔とは裏腹に、ヤナギの顔は暗いままであった。

 別にボスが倒されるのが嫌なわけではない。このクソみたいな生活から解放される日が近づいてきているのだから嬉しくないわけがない。

 だが、それ以上にPKをして、人を殺して生きていることに嫌悪を抱いていた。正確に言えば、PKをしても何も感じなくなってきている自分を恐れている。


 人狼として生きる覚悟をきめた日からPKを繰り返してきた。

 初めの方は、PKをするたびに吐き気を催して罪悪感に苛まれた。しかし、PKの回数が2桁を超えたころには、吐き気を催すことがなくなり罪悪感も薄れてきた。


 人を殺して何も感じなくなってきている自分がどうしようもなく嫌だ。

 心まで人でなくなっているように感じ。

 だんだんと本物の化物になっている気がした。



 現在ヤナギのレベルは17。

 最前線にいるプレイヤーの最高レベルが20前半と言われているので、なかなかの高レベルである。

 フィールドにも出ずに、短時間でここまでレベルをあげることができたのはPKを続けたことによるもの。正確に言えば、人狼専用スキル「PK経験値up」のおかげ。


 スキルとは、プレイヤーや武器、装備などが持つ特殊能力。

 基本的には個人のみに効果を発揮するが、他のプレイヤーやモンスターに効果を発揮するものもある。

 また、スキルには一部の例外を除き、レベルが設けられている。“スキルレベル”の上限は「5」であり、レベルが高くなるほど大きな効果を発揮。そのスキルの使用回数が一定を超えることでレベルアップする。


 初めてPKを行った日、「PK経験値up」「人喰飢餓」の2つのスキルを手に入れた。

 この2つのスキルはナヤギの予想通り、人狼専用スキルであった。


 「PK経験値up」は、その名の通りPKを行った際に獲得できる経験値が多くなるスキルだ。スキル修得条件は、PKを行うこと。

 このスキルはかなり有能と言っていいだろう。

 驚くべきなのが、獲得できる経験値の量だ。通常PKの場合、獲得できる経験値の量は、だいたい同レベルのモンスターを倒した時の10分の1。

 しかし、このスキル「PK経験値up Lv.1」を持っている際には、獲得できる経験値はその100倍となる。つまり、モンスターを倒した時の10倍の経験値を1度のPKで手に入れることができる。

 ちなみに、ナヤギの持つこのスキルは現在Lv.2。10人目をPKした際にレベルアップした。その効果は、Lv1の倍である。


 「人喰飢餓」は、PKポイントが一定以下の時に発動し、PK行った際に獲得できるPKポイントが増えるスキルだ。スキル修得条件は、PKポイントが「1」の時にPKを行うこと。

「人喰飢餓 Lv.1」を持っていれば、PKポイントが1以下のとき獲得できるPKポイントが倍になる。つまり、1回のPKで2ポイント獲得できるわけだ。

 このスキルのおかげで、平均1日1回PKをする必要がなくなった。



 「・・・そろそろ時間か」


 メニュー画面を開き時刻を確認する。

 ちょうど日付が変わったぐらいだ。次にステータス画面を開く。

 赤くドロッとした数字が「1」になっていた。


 「くそっ・・・」


 ナヤギは重い足取りで、外へと出て行った。




 

 夜中の薄暗い路地裏に小刻みな足音が響く。


 「はぁ・・・! はぁ・・・!」


 胸が苦しい。足が思うように動かない。

 部屋から出て小一時間ほど経った後、ナヤギは路地裏を全力で走っていた。


 足を止めて休みたい。

 しかし、そんなことは出来ない。


 「こっちに居たわよ!!」

 「追え!! 絶対に逃がすな!!!」


 ナヤギは追われていた。


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