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第六話:嫌がらせか!?

 ルエラの態度に動揺しまくった翌日。改めて私はルエラの恐ろしさを痛感していた。昨晩頭が混乱しすぎて情緒不安定になった私はアトリエで寝たら翌朝、部屋が改造されていた。いや違う。改装されているんだ。


「おはようございますマルシェお嬢様」


 家具の配置は変わってない。変わってはない。だけど、なんだ……これ!? いつの間にか壁紙が張られ、床にはテーブルクロスが敷かれ、公爵邸にあるようなきらびやかな家具が存在し、元の素朴な面影はなかった。


「いやいやいや、今すぐ直してっ!?」

「なぜですか。折角お嬢様に相応しいようにしたのに」


 キッチンから現れ、悪びれる様子もなく答えた人影は控えめに言って天使だった。


 ほんのり色づいた頬にかかる白銀をひとまとめにすると、生娘かのような白いうなじが現れる。思わず触りたくなる首筋のラインが見える。彼が頭を傾げると、後ろの尻尾も軽く揺れるのだ。それはもう、愛玩動物の尾のように。


 いや、女の子かよ。男でしょうお前さん。なんて言葉も出てこないほど、可愛らしい。


「な、な……!」

「朝食出来ましたよ。お腹が空いているでしょう? おかわりもありますので遠慮なく──

「嫌がらせか!?」

 女として、負けた気がする。


 嫌がらせとしか思えない。色んな意味で。一分もたたないうちに私はルエラを目の前で正座させていた。


 ルエラの前で仁王立ちになり彼を見下ろす。

「部屋の改装の材料と費用は?」

「公爵家のマルシェお嬢様用のお金を使い、王都でも活躍されていた方に特注でお願い致しました」


 え、私の予算ってあるんだ……。まずそこだよね。でも特注ってなんでよ。私こんなキラキラした感じ苦手なんだけど。知らない? 知らないよね、この前あったばかりだしね。


「……料理の材料は?」

「同じく公爵家のマルシェお嬢様用のお金を使い、シェフから材料を買って参りました」

「なぜ、ここにいるの?」

「それは昨日お話ししたはずです」


 頭が痛い。無表情で私を見上げるルエラは、一体何がしたいんだろうか。私は放っておいてほしいのに。わかるよ。ユーリェでしょう。もしユーリェだったら、で進んでるんでしょう。


 腕組をしてルエラを睨み付ける。どんな事情にしろ、私はそれを許すつもりはない。こんな部屋で暮らしてたらそのうち熱だして倒れそうだ。

「その許可を出した覚えは無いんだけど」

「申し訳ありません。ですが、お嬢様の身の回りの世話をするのが私の役目です」

「断るわ」


 私は間髪入れずに答えた。だけど、ルエラはずるい。

「ですが、それが無くなれば私の仕事がなくなります」


 どうしようかこの状況。そんなこと言われたらどうしようも無いじゃないか。少し、考えるしかないじゃないか。私これでも疲れているんだけどな。そうだな、少し予定は早いけど繰り上げるしか無いんだろうか。


「ルエラ、私の国立魔術高等学校(ハイ・アカデミア)での専攻が何か覚えている?」

「魔術理論、魔法式、魔術付与、そしてそれらを用いた魔術具の開発と研究です」


 魔術具の開発と研究。この世界に生まれた私は、魔力は貴族として見ても多い方だ。なにせ悪役令嬢なのだから。それでも、逆を見れば悪役令嬢ならではのデメリットも付いてくるのだ。魔術具を開発し始めたのはすべて、追っ手から逃げるためだ。そのため、今完成している魔術具もそれに特化している。


「その通り。私は今この一帯の利権のすべてを手にしている。だけれど、密猟や不審な行動をとる者が入ってくる可能性があります。私はそれを好まない」


 監視されるのは嫌い。束縛されるのも嫌い。だけどある程度の目が付いてくることを許容しないとこの先生きていけない。だから、これが私にとっての妥協点。

 私が今回試すのは、絶対守護を詰め込んだ球体の感知、防衛システムだ。使用者が誰かもわからないように、魔力透明化も付与されている。


「貴方の家を作ります。三日後からそこで暮らすように。主な仕事は魔術具による土地の管理、不審者の撃退、または捕獲です」

「かしこまりました」

「それと、私の生活には干渉しないこと。朝食もインテリアも、日々の活動さえもすべてを私が決めます。公爵家の人間としての最低限の義務も果たしましょう。意見を言うのは良いですが、勝手にそれを行動に移さないで」


 正直、これでもかなり辛い方なんだけどね。まぁ、しょうがないよな。こればっかりは。


「それだけでしょうか」

「おおまかにはね」


 上を見上げて、口を開いた。


「とりあえず、全部もとに戻してほしいな」

「かしこまりました。昼のうちにすべて終わらせます。まずはお食事を」


 食事、かぁ……。正直完全に信用できたわけじゃないんだよね。だからなんかなあ。だけど机の上は豪華だ。三段重ねのパンケーキにベリーソースがかかっている。しかも作りたて。


 たべたい、けど食欲が湧かない……。それでも、作ってくれたんだし一口食べるか。フォークとナイフを手に取り、一口サイズに切って、口もとに運ぶ。


 だけど、そこから進まなかった。


「……ごめん。食べれない」

 食べ物を、口に入れることが出来なかった。

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