表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

オープンカレッジだぞ!!

僕は、5連休です!!

 僕は今日大学に行った。

 大学に行ったのである。今更ながら、僕は大学生なのである。

 第8話にして、初めての受講なのであった。

 誠に不条理なのだが、僕は不真面目な学生ではない。

 ただ単に、あの娘とこの場所で遭遇していないからなのであった。

 しかし・・・・・・、僕が大学に来たと言うことは、嫌な予感がする・・・・・。


 「数彦殿お・・・!!」

 ポンッと、僕は肩を置かれた。

 (!!!!!!!!!!)

 何だ、先日のNTS48のコンサートに一緒に行った友達であった。

 「数彦氏・・・・・!

 先日は大変楽しかったでゴザルなあ・・・!」

 確かに、友人の言うとおりである。

 NTS48のコンサートは、楽しかった。

 だがしかし・・・・・。

 僕の脳裏に、あの娘の顔がよぎった・・・・。

 そして、警備員に引っ張られて事務所に連れて行かれ、怒られた事も・・・・。

 

 「ううん!!」

 僕は正気に戻るために、ブンブンと首を横に振った。

 あの娘は、僕にとっては現実ではない、かといって夢でもないのだけど・・・・・。

 

 「でも、今日もかったるいでゴザルなあ・・・・。」

 友人は、大学の講義が好きではないようなのであった。

 まあ、僕はなりたい職業があるためにこの大学の学部に入学したのであり、それなりに真面目に講義は受けたいと思っていた。

 もうそろそろ、講義が始まる時間が迫ってきた。

 その時・・・・・・・。


 「おおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」

 突然に、友人が叫びだした。

 な、何なのであろうか・・・。

 友人は、何に対して驚いたのであろうか?

 しかし、友人の驚きは或意味、トキメキに近い感覚を僕は持ったのである。

 僕も友人が興味を持った方向を、関心をもって見ることとした。

 「おおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」

 突然に、僕も叫び指した。


 なんと、教室の前の方の席に制服の女子高生が座っているのであった。

 ついちょっと前まで高校生だった僕であるが、やはり大学で女子高生を見るのは新鮮味があるのであった。

 しかも、後ろ姿だが推測するに、おそらく可愛い娘ではなかろうか。

 「ふむ、なぜ数彦氏。

 なぜJKが、この大学の教室にいるのでゴザろうか!?」

 「うーん・・・・。

 たぶんオープンカレッジ(※注釈)じゃないかなあ??」

 僕は、無難な推測を述べた。


※オープンカレッジ・・・学校法人が、入学を考えている人に対して、学校を公開してより関心を持ってもらうためのイベントである。


 まあ冷静になってみると、格別騒ぐとこともないと思ったので、僕はそのまま席に着いた。

 しかし、僕の友人は黙っていなかった。

 「何をしているのでゴザルかな!?数彦氏!」

 何を企んでいるのだろうか、この男は?まさか・・・・・。

 「さあ!行くでゴザル!!数彦氏!」

 「な!?なにをしようというんだよ??」

 「決まっているでゴザろう!!ミスター数彦!」

 「・・・・・・まさか、お前・・・!」

 「そう、そのまさかでゴザる・・・!」

 友人はニヤリと笑い、前の席に歩き出した。

 「わわっ!!」

 僕は、慌てて友人の後をついて行った。

 僕たちが向かった先は・・・・・。


 「ふふふ・・・・・・。」

 友人は相変わらず、不敵な笑みを浮かべている。

 僕たちの前にいるのは・・・・・。


 先ほどから、僕たちの目を釘付けにいているおそらくオープンキャンパスでの受講と思われる女子高生であった。

 近くで見たら、なるほど可愛い感じの娘だ・・・・。

 後ろ姿だけど・・・・。


 「そこの女子殿おなごどの!!」

 うおっ!!僕の友人は心の準備も許さずに、その女子高生に声をかけた。

 「んんーーーーーー?」

 その女子高生は、クルリと僕らの方を振り向いた。

 

======!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!===========


 僕の背中に、そして脳みそに100万ボルトの電流が走った!!

 

 「なんだ!数彦じゃないか!」

 なんと、その女子高生はナターシャであったのだ。

 僕は驚いているなりに、ナターシャの制服姿を観察した。

 やはり制服を着ていると、彼女は僕よりも3つ位年下なのかなあ、と思ってしまう。

 顔つきも、やはり幼さが残っている。

 僕は今回のナターシャに、新鮮さを感じつつも、これからどうなるのかという不安を隠し得なかった。


 「なんだー!数彦氏も隅に置けないでゴザルなあー!!」

 友人は、肘で僕の腕と突っついてきた。

 「数彦氏は、どうやってこの娘をゲットしたのでゴザルかな!?」

 「ち、違う!誤解だってば!」

 完全に、友人は僕とナターシャの関係を勘違いしているようであった。


 「いや、実はこの娘は僕の従妹なんだよ!!」

 僕は出任せに嘘をついた。大丈夫なのか、冷や汗ものである。

 「なるほどー!しかし、数彦殿の従妹君いとこぎみはとても可愛いですなあー。」

 どうも僕の友人はとても人を信じやすい性格らしく、上手いことごまかすことが出来たようである。

 「従妹君いことぎみは、オープンカレッジで来たのでゴザルかな!?」

 友人は、遠慮することもなくナターシャに質問した。

 「おう!!たぶんそうだと思うぞ!!」

 ナターシャは、友人に即答した。

 おそらく、ナターシャは意味も分からずにしゃべっているのであろう・・・・。

 そして、僕たちは元の後ろの席に座った。

 そんなこんなで、講義の時間になった。

 講師の先生が入室してきた。


 講義が始まった。

 この講義の先生は、教授であり五十代後半の年配の先生であった。

 とても柔らかい物言いをする人で、性格も穏和な感じであった。

 僕自身も、この教授の講義は嫌いではなかった。

 とくに何の波乱(?)もなく、講義は淡々と進んでいった。

 しかし・・・・・・・。

 

 「ここまでの内容で、なにか質問などはありませんか?」

 教授が、一呼吸置いて質問の時間を設けた。

 だがもっとも、人前で挙手をして質問をするのは少々恥ずかしく、勇気の要ることだと思うのである。

 だが今日は、状況が少し違う・・・・。


 「ナターシャ!!」

 ナターシャが大きな声で手をあげた。

 僕の予想通りにナターシャは動き出した・・・・。

 「んんー?君はオープンカレッジで受講している子かな?

 大変元気がよろしいね!

 では質問などがあれば、なんでもいってごらんよ。」

 教授はとても優しい口調でナターシャに語りかけた。

 だが、彼女は・・・・・。


 「全部わからん!!」

 ナターシャは両手の拳を腰におき、堂々と教授の目を見て言い放った。


 ==========ガクッ!!=============


 あまりのナターシャの堂々とした振る舞いに、僕は思わず拍子抜けした。

 周りから、クスクスという笑い声が聞こえてくる。

 なんだか僕が恥ずかしくなってきた・・・・。

 僕はナターシャの保護者でもないのに・・・・・。

 

 よくよく考えてみると、確かにこの講義の内容は難しい。

 正直、僕でも今ひとつよくわかっていない。

 高校二年生(?)になったばかり位の、ナターシャがこの講義を理解できないのは無理もない話であろう。

 「うん、たしかに私の講義は君には難しいと思うね。

 今はわからないけど、勉強し続ければそのうち理解できるようになるから、心配しないでもいいよ。」

 教授は落ち着いた様子で、小さな女の子に諭すような優しい口調で、ナターシャに言った。

 「う・・・・、ううーん。そうなのか??」

 ナターシャは、いまいち納得がいかないような様子であった。

 「そうだよ、お嬢さん・・・。」

 教授はにこやかに笑って、念を押した。

 ナターシャは、親に上手にごまかされた小さな子供の様に、スッキリしない表情で着席した。


 この講義も終盤にさしかかっていった。

 「さて今日は宿題を出しましょうかね・・・。」

 教授は、少々意地悪そうな微笑を浮かべて僕たちに報告をした。

 周りを見回すと、みんな嫌そうな表情を浮かべている・・・・・・。

 やはり大学生になっても、誰でも宿題は好きではないようであった。

 しかし・・・・・・・・、目を輝かせている人物が一人だけいた・・・。


 「あ・・・・・・。

 そこのお嬢さんは、宿題はやらなくて良いからね。

 この大学の学生だけの対象だからね。」

 教授は、期待の眼差しで見ているナターシャに向かって、確認の言葉を伝えた。

 とたんに、ナターシャの表情が曇りだした。

 自分だけ仲間はずれにされている、と思っているのであろうか。

 なんだか、先ほどの輝いていたナターシャの瞳は、涙で潤んでいた。


 「あ、あのね・・・・・。

 お嬢ちゃん・・・・・。」

 悲しみの表情を見せるナターシャに対して、明らかに教授は戸惑っていた。

 そして・・・・。


 教授は、ナターシャの側に歩み寄って行った。

 「じゃあ、お嬢ちゃん、こうしようか?

 特別に君への宿題をあげるから、自宅でやっておいで・・・。

 いつでも、私のところにこの宿題は提出に来て良いからね・・・。」

 なんと、教授はナターシャのレベルに会わせた宿題を考え、彼女に手渡したのであった。

 ナターシャは、涙をぬぐって、再び笑顔を取り戻した。


 「頑張るぞ!!」

 ナターシャは、右拳を振り上げて叫んだ。

 「頑張るんだよ・・・・・。」

 教授はナターシャに、諭すようなエールを送った。

 教授のナターシャに対する気遣いに、教室全体は暖かい雰囲気に包まれた。

 僕自身も、久々にいいものを見たような気がしたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ