カリスマ理容師だぞ!!
寒くなったり、暖かくなったり・・・・。
春ですね・・・・。
今日は、僕は散髪に行った。
とはいっても、僕は一人暮らしを始めて最初の散髪だから、散髪屋を探さなくてはいけない。
「どこか、散髪屋はないかなあ・・・。」
僕は散歩も兼ねて、フラフラと近所を歩いていた。
「あ、気持ちよさそうだなあ・・・・。」
今日は天気が良いのだが、日向ぼっこをしている者がいたのであった。
いつも見かけると思われる黒猫であった。
こうゆう光景を見たら、ますますゆっくりと歩いて回りたいと思うのであった。
しかし、すぐに目的地にたどり着いてしまったのである。
ちょっと古い感じの散髪屋であった。
いかにも個人経営らしい、昔ながらの店構えである。
僕は全くためらわずにドアを押し、その散髪屋の中に入っていった。
「いらっしゃい!」
その散髪屋の店主は、温和な感じの中年のおじさんであった。
感じはなかなか良い人そうなので、僕はこの散髪屋で間違いではなかった、と思った。
「カットですかね?」
散髪屋のオジサンは、愛想良く僕に対応した。
「はい、カットをお願いします。」
僕は、なんのためらいもなく答えた。
なんとなくこのオジサンは、腕の立つ感じがしたのである。
僕はオジサンに案内され、席に着いた。
しかし、ここから僕の期待に反する展開が待っていたのであった。
「ああ、最近とても元気な女の子が入ったんだよ!
その娘にカットしてもらうからね。
お客さんも若いから、その方がよろしいんじゃないかな?」
気さくな感じでその店主は言ったので、僕は悪い気がしなかった。
それに、正直言ってその女の子に期待してしまっていたのである。
しかし・・・・・・。
「ナターシャ!!!!」
何故か控え部屋から、ナターシャが出現してきた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
僕は予想外のことに、言葉が全く出なかった。
ナターシャは一応は散髪職人の格好をしている。
「ナ・ターシャ♪ ナ・ターシャ♪
ハ・サミは切れーる♪ ア・ターマも切れーる♪
アナタも切れーる♪ とにかく切りまくーるナ・ターシャ♪
カ・リ・ス・マりよーし♪ ナ・ターシャー♪」
ナターシャはとてもヘンテコな歌をうたいながら、両手に持ったハサミをチョキンチョキンとさせていた。
僕はそのナターシャのカニのような踊りに、恐怖を感じていた。
「ははははは!!ナターシャちゃん、ハサミを振り回したらあぶないよ。」
オジサンは、ナターシャを小さな子供に対してかのように優しくたしなめた。
なぜかオジサンは、ナターシャを受け入れているようだ。
僕はその店主のオジサンの態度が心配になって、ひそひそとおじさんに耳打ちをした。
「あのう、この子の身元は大丈夫なんですか?
なんだか、高校生くらいにみえるんですけど・・・・・。」
しかし・・・・・。
「うーん、いいんじゃないかなあ?
だってこの子は、とっても可愛いし。」
店主はにこやかな顔で、少しの不安もなさそうに僕に答えた。
(こ、このおやじ・・・・、ナターシャに負けないくらいやばい・・・!)
僕は完全にこの散髪屋を諦めて、別の店を当たろうと、決心した。
「あの、またの機会でいいです・・・。」
そう言って僕は席を立ち、上手いこと散髪屋を出ようとした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーガシッ!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕は店主とナターシャに両脇を抱えられて、もとの席にズルズルと連れて行かれ座らされたのであった。
「はわわ・・・・・・。」
僕は、恐怖で体が硬直してしまっていた。
「さあ!!ナターシャちゃん!!
今から、存分に練習するんだよ!!」
店主の口から信じがたい言葉が発せられた。
(僕をナターシャの散髪の練習台にしようというのか・・・・。
このオヤジ・・・・・・、完璧に狂っている・・・・。)
僕の心配をよそに、ナターシャが散髪を始めた。
「お客さん、結婚して何年目ですか?」
どうも散髪屋の、会話の決まり文句らしい・・・・。
もっとも大学一年の僕には、完全にアウトコースの話題なのだか。
僕は面倒くさくなって、ナターシャに返答しなかった。
散髪の、順番からしてまずは髭剃りであろう。
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
鏡にナターシャがカミソリを持ってニコニコしている姿を確認できた。
僕の首筋に、ナターシャの持つカミソリが接近してきた。
「ひ、いいい・・・・。」
今の僕は、おそらく顔面蒼白であろう。
(・・・・・・・・!)
しかし意外にも、ナターシャのカミソリ裁きはとても上手であった。
ナターシャの女性、いや女の子らしい優しいタッチの髭剃りは非常に心地よかった。
僕はあまりの気持ちよさに、だんだんと眠りの世界に誘われていったのである。
「お客さんいかがでしょうか?」
ナターシャの声で僕は目が覚めた。
僕はあまりの気持ちの良さに、散髪の最後まで眠っていたようだ。
僕はナターシャの散髪の出来に、期待を胸に抱きながら鏡を見た。
「ぎゃあ!!!!!!!!!!!!!」
鏡をみた僕は、その仕上がりに思わず悲鳴を上げた。
僕はナターシャに、まさにタイガーカット・・・・・・、虎刈りにされていたのであった。
「ひいい・・・・。」
あまりの凄惨な自分の髪型に、僕は大きなショックを隠せなかった。
「うむ、残念無念!!」
ナターシャは、目をつむり両腕をくんでコクッとうなずいた。
そのナターシャのあまりに潔い態度に対し、僕は絶望し気が遠くなり意識を失った
ーーーーーーーーーーーーーーーしばらくしてーーーーーーーーーーーーーーーー
ポンッと僕は肩を叩かれた。
「お客さん、席をついた途端からずっと気持ち良さそうに寝てましたね。
わたしのセンスでカットさせていただきましたが、いかがでしょうか?」
店主ににこやかに、僕に鏡を見ることをすすめた。
恐る恐るに僕は、鏡を見た。
僕の頭はとてもキレイにカットされていた。
今の僕に、とてもしっくり来る髪型だ。
この店主は、腕の良い散髪職人だった。
今回のナターシャは、僕の夢だったようだ。
僕は会計を済ました。
「またおいで下さいな・・・・!」
散髪屋の店主は、僕を見送った。
おそらく次回も、この散髪屋に行くであろう。
しかし今回に話は、まだこれでは終わらなかった。
僕は今回の散髪の領収書を見て驚いた。
なんと領収書の裏には・・・・・・。
(数彦・・・・・。
今回のアタシの散髪、大失敗してゴメンな・・・・。
時間は元に戻したから、オジサンに綺麗にカットしてもらえたな。
ナターシャ)
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ナターシャの書き置きが、あったのである
なんと、僕は本当にナターシャに散髪してもらったのか!?
ナターシャには時間を操る能力があるのか!?
ナターシャ・・・・・・・・、本当にあの娘は大魔導師なのかも知れない・・・・・。