掃除をしよう!!
とても、寒いけどお話の季節は春です、
今日も日曜日なので休日である。
僕は部屋でのんびりと過ごしていた。
「おおっ?」
僕は侵入者に気がついた。
例によって、黒猫である。
黒猫は、前足の甲で顔を掻いていた。
そして、大きなアクビをしていた。
この瞬間、僕は何かをしようする気持ちが無くなった。
もっとも、黒猫のせいにして自分自身のやる気のなさの言い訳にしているだけなのだが・・・。
僕の意識はもうろうとして、今にも深い睡眠に入ろうとさしかかっているところであった。
ーーーーーーーーーーーーーーしばらくしてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナターシャ!!!!!」
(!?!?!?!??!?!?!?!?!??!?!??!?)
夢なのか?夢ではなかったのか!?
その声の主はたしか・・・・・・。
黒いトンガリ帽子・黒いマント・黒いスリット入りのスカート・・・・・・。
また現れたのか・・・・・・・・!
「元気か!?数彦!!」
その女の子は、とても元気であった。
「うん、まあまあ元気かな・・・。」
僕は、彼女とは無難に問答をしようとした。
「しかし!!」
ナターシャは、腰に両拳を当ててポーズを決めていた。
今度は何を言い出すのであろうか、この娘は・・・・。
「部屋が、あんまり元気じゃない!!」
ナターシャは、ビシッと決め台詞を吐いた。
「はい!?」
僕は、今ひとつ意味がわからずに相づちを打った。
「そう!!たとえばここ!!」
ナターシャは人差し指で、壁の隅をなぞった。
「立派なホコリが付いておられる!!!」
女の子は、そのガサツそうな物言いに似合わず、見るところが細かいようである。
(アンタは、面倒くさい姑か・・・・?)
僕はまた、何か起こりはしないかと不安になってきた。
「よし!!やるぞう!!」
彼女は右手を挙げ、やる気満々の様子である。
一体何に対して、やる気満々なのであろうか・・・・。
「やるぞう!!、数彦!!」
わかってることはただ一つ、彼女の目が本気であることである。
「あの・・・?何をするのかな??」
僕はストレートに、彼女に問いただした。
「掃除だよ!!そ・う・じ!!」
ナターシャは僕を指さして、大きな声で言った。
あんまり人に指を指されるのは、気持ちの良い物ではないのだが・・・・。
・・・・・・・・・・・。
しかし彼女の言うことはもっともである。
僕は春から、このアパートに住みだしてから、真面目に掃除をしたことがほとんど無い。
と、言う訳で彼女の提案に、乗っかってやろうという考えが芽生えてきた。
一人で掃除するよりは、彼女と二人で掃除した方が楽だからである。
早速、掃除を始めた。
僕は掃除機、ぞうきんがけ、窓の掃除・・・。一通りの考えられることをやっていた。
しかし、彼女は僕の考えのさらに上をいっていた。
女の子は、ピョンピョンとあちこちに飛び乗り高いところを拭き掃除していたのだ。
(す、凄い・・・・。なんて身の軽さだ・・・。
まるで、猫みたいだ・・・・!!)
ナターシャは、ピョンッと飛び上がり床に着地した。
そして、とても得意げな表情で僕の前に立っていた。
でも・・・。
彼女が天井を見上げたその瞬間・・・・・・・、表情が曇りだした・・・。
何故なのであろうか?
「んんー!!!」
女の子は唸りだした。
「ど、どうしたの・・・?」
部屋は綺麗になったというのに何が不満なのであろうか・・・・。
「気になる・・・・・!!!」
彼女は、口走った。
「はい?」
僕はさっぱり何のことかわからなかった。
「天井の真ん中が気になる・・・?」
女の子は、どうやら完璧主義の様であった。
なるほど、足場がないので流石に身軽な彼女も、天井の真ん中辺は拭き掃除できないであろう。
「頼むぞ!!!!」
彼女は力強く、叫んだ。
「へ?」
やっぱり、なんのことやら分からない。
「肩車頼むぞ!!!!」
女の子はなんと、僕の肩車に乗りたいと言い出したのである。
掃除の為とはいえ、スカートを履いた(しかもスリットのついた)彼女を肩車するのは抵抗があった。
「よし!!行くぞ!!数彦!!」
そのように思っても、女の子の勢いに負けた僕は、彼女を結局は肩車したのである。
「よしよし!!」
僕の肩車に乗った、女の子は天井をフキフキしていた。
しかし・・・、ここで予想外の異変が起こったのである。
「クッシュン!!!!」
僕は非常に勢いよく、しかも突発的にクシャミを放ってしまったのである。
急に安定感を失った彼女は、当然体勢を崩した。
そして、落下し出したのである。
僕は慌てて、その女の子を受け止めた。
ちょうど僕は彼女を偶然とはいえ、お姫様抱っこした形になったのである。
僕も、女の子も体勢的にとても照れくさい雰囲気になってしまっていた。
「大丈夫か?ナターシャ。」
僕はいたたまれなくなって、思わずこの言葉がでた。
「にゃ!?」
ナターシャは、突然に僕の腕から跳ね上がった。
そして空中で体を回転し、見事に着地した。
僕の目の前にいる彼女は、ニッコリと微笑んだ。
「やっとアタシの名をよんでくれたな、数彦!」
ナターシャは、とても嬉しそうだ。
「いやナターシャ、そんなつもりじゃ・・・・。しどろもどろ・・・。」
僕は自分の思わず発した言葉に対して、上手く説明ができなかった。
「ニャー!!」
ナターシャは、大喜びで僕に抱きついてきた。
「こ、困った娘だなあ・・・・。」
僕は、ナターシャに大弱りであった。
もっと、楽しいお話になったらいいな、と思います。