君との出会い
僕、平田辰也が結城菫に出会ったのはある春の日だった。
母にお使いを頼まれて渋々スーパーへ向かう途中。
少し先の道で女の子が遠くの野良猫を見つめていた。
猫が苦手なのだろうか?それともアレルギーでもあるのか?
彼女はジッと猫を見つめるだけで近寄る気配すらない。
変なやつ。なんて思いながら彼女の横を通り過ぎスーパーに向かった。
無事にスーパーに着き買い物を済ませて帰り道を歩いていると急に後ろから右手を掴まれた。
吃驚して振り返ってみれば僕の腕を掴んでいたのは先程の女の子だった。
「あの、僕に何か?」
僕はできるだけ優しい笑顔で彼女に問いかけた。
彼女は少し緊張した様子でゆっくりと口を開いた。
「えっと、このお財布あなたのですよね?後ろのポケットから落ちたのを見て届けようと思って、それだけなんです。」
そう言って僕に財布を渡すと、彼女は一礼してスーパーの方へと行ってしまった。
家に帰り荷物を置いてからなんとなくもう一度外へ出た。
何の用事も無いのにスーパーへ一直線に向かう。
歩いている最中、彼女にお礼くらいしないと。とか野良猫が気になる。とか。
いろいろなことを考えて歩いていたけれど多分あのときの僕はただただ彼女に会いたかったんだろう。
彼女が野良猫を見ていた道まで来ると、スーパーの帰りなのか猫の柄のエコバッグをもった彼女が少し前の方から歩いてきていた。
僕は彼女のもとへ駆け寄り、話しかけた。
「こんにちは。さっきは財布を拾ってくれてありがとうございました。何かお礼をさせてください。」
僕がそう言うと彼女は
「お礼ですか?」
と心底不思議そうに訪ねてきた。
それから少し考えて
「では、私とお友達になってくれませんか?」
と言いながら右手を差し出してきた。
そんなことでいいのか。と思いながらも僕は彼女の手をとった。
この日から僕と彼女の不思議な関係が始まった。




